自社株買いにより株価が上がる理由とどの程度影響があるのか。
今回の決算発表において自社株買いを発表している企業がいくつかありました。直近で特に大規模な自社株買いを発表した企業は次の通りです。
いずれも10%以上株式の取得を発表した企業を羅列していますが、いずれも発表後株価は高騰。終値ベースで前日プラスとなっています。ソフトバンクは時価総額が大きい企業でありながら、規模が大きい自社株買いですので話題にもなりました。
さて、なぜ自社株買いにより株価が上がるのか整理します。
株式がオークションの様に売買されますので、買いたい需要が高まれば、値段はつり上がっていきます。また、自社株買いを行うと、市場に出回っている株式数が減少します。こうすることで、需要と供給のバランスの中で、供給量が減るわけですから価格を押し上げる効果になります。
また、自社株取得し消却することで1株あたり純利益(EPS)が増えるという効果があります。
EPS=純利益/発行済株式
であり、発行済株式が減ることでEPSが増えます。EPSが増えるということは、例えば純利益をケーキ、株式数をパーティーの参加者とすれば、ケーキを均等に分けたときの1人あたりの分前が増えるということですから、株主にとっては嬉しい話になります。
この後者の理由にて、株価にどの程度影響を与えるかシミュレーションをしてみます。
例えば現在1株あたり1,000円の株があり、発行済株式総数10百万株に対して20%の2百万株買われたとします。この企業の純利益は1,000百万円とします。
このとき、自社株買いの前のEPSは、
EPS=1,000百万円/10百万株=100円
となります。
株価収益率PERは株価/EPSですので、
PER=1,000円/100円=10倍
自社株買いをしてもこのPERが変わらないとすれば、株価はどの様になるでしょうか。まず、自社株買いによりEPSが増えますが、
EPS=1,000百万円/(10-2)百万株=1,000百万円/8百万株=125円
株価=EPS×PER=125円×10倍=1,250円
となり、株価1,000円に対して、25%ほど株価を押し上げる効果があったことがわかります。
ただし、あくまでこの計算は仮定で、企業の自社株買いを行う株式総数は上限で発表します。ですので本当に全てを買うかどうかはわかりません。また、取得期間が非常に長い場合は、長い取得期間の間で株価が安い時期に買っていく、というやり方ができます。それでも株価低迷時の下支え効果はあります