まなびの『び』

投資運用、業界研究、時事、その他学んだことを

新生銀行のTOB状況についてもまとめてみる。

昨日は関西スーパーマーケットTOBについて整理していましたが、今度は同時にこちらも混乱している新生銀行についても見ていきたいと思います。

 

関係各社

新生銀行(8303)

前身の日本長期信用銀行が1998年に経営破綻し一時的に国有化された経歴をもつ都市銀行消費者金融アプラスや、カードローンレイクなどノンバンクなど強みはある。

SBIホールディングス(8473)

SBI証券、銀行、SBI損保など、ネットを中心とした金融サービスを提供。地方創生をテーマに各地銀と提携をしており、新生銀行とは地方創生分野で協業。全国地銀と資本提供している。2021年3月現在で新生銀行株を16.50%保有

○国(預金保険機構整理回収機構

新生銀行に対しては公的資金を注入していて、その返済必要額は残り3,500億円。預金保険機構が2021年3月現在で新生銀行株を10.39%保有整理回収機構が2021年3月現在で新生銀行株を7.72%保有。この株式を新生銀行は買取をすることで返却する必要があり、株価換算をすると、1株あたり7,450円となり、新生銀行企業価値を上昇させ株価を上げる努力をする必要がある。

 

【2021年9月9日】

SBIホールディングス新生銀行TOBをかける旨を発表。TOB価格は2,000円(9日終値1,440円で、39%のプレミアム価格)。発行済株式の48%を上限に取得することを目指す。期間は9月10日から10月25日まで。

【2021年9月17日】

新生銀行が取締役会でSBI以外の株主に新株を無償で提供する買収防衛策の決議。SBIの保有比率を下げる仕組みで臨時株主総会にかける予定。TOBの期間を12月8日まで延長を要請。

【2021年9月30日】

SBIがTOB期間を12月8日まで延長を発表。

【2021年10月21日】

新生銀行TOBに対して条件付き反対の立場を表明。48%の買付上限の撤廃。TOB価格の引き上げの2点に応じればTOBに賛成をする。これに対しSBIは条件に応じない旨を発表。

【2021年11月5日】

預金保護機構が新生銀行、SBI双方に質問状を送付。

【2021年11月23日】

預金保護機構、整理回収機構新生銀行の買収防衛策に対して賛成しない旨の方針を発表。

【2021年11月24日】

新生銀行とSBIが協議の上、新生銀行が買収防衛策を取り下げ、翌日に予定していた臨時株主総会は中止に。

 

このような経緯で決着になることになりました。結局、預金保護機構と整理回収機構の賛同が得られないことに対して、取り下げざるを得なかった、という様に見ることができます。

ちなみに、そもそもなぜSBIの取得上限が48%なのかというと、銀行法の問題があります。銀行法では銀行議決権の過半を取得すると、「銀行持株会社」となる条件が一つ達成されてしまいます。銀行持株会社になると銀行と同じくその企業が営業することができる業務に制限がかかってしまいます。「事業会社への出資上限が15%まで」という制限があり、SBIの場合、すでに傘下にある他の事業を売却しなければならなくなる可能性が出てきてしまいます。

 

ちなみに、新生銀行の株価の推移は次の通り。

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2021年9月に入ってTOB報道で上昇し、高値圏内で維持。

11月5日に上記の経緯には載せませんでしたが、海外の議決権行使助言会社が買収防衛策に賛成を推奨するレポートが発行された報道を受け、TOBならない可能性が高まると株価は下降。

11月24日に預金保護機構、整理回収機構の買収防衛策への反対報道で、株価が復活しました。

 

関西スーパーとは違ってこちらは現状、SBI傘下に入ることで決着がつく形になります。今後SBIがどのように金融業界へ変革をもたらすか、興味深いです。