まなびの『び』

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東証再編に対するコーエーテクモ(3635)の対応

今回は三國志信長の野望で有名なゲームソフト開発のコーエーテクモについて紹介します。上述の作品や無双シリーズなど結構やっていたので私にとって馴染み深い企業です。

今回このコーエーテクモを取り上げるのは、先日記事に記載した東証再編により、コーエーテクモに動きがあったのでそちらの紹介となります。

 

東証再編についてはこちら

 

manabinobi.hatenablog.com

 

コーエーテクモの企業概要

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改めましてコーエーテクモは歴史を題材にするゲームを特徴とするゲームメーカーです。2021年3月期の決算短信をみると、2021年3月期は「ゼルダ無双 厄災の黙示録」が370万本を超えるヒット。スマホアプリの「三國志 覇道」は月商10億円を達成と、非常に好調な2021年期で、売上高前期比41.6%増、最終利益も93.1%増と過去最高となりました。特にアジアや北米での伸びが大きかったのが特徴です。

今期も非常に強い成長を見せています。「三國志 覇道」が1周年で、台湾、香港、マカオで新たにサービス開始、「戦国無双5」が欧米向けに発売など、好調を維持。2022年3月期の第2四半期は前年同期比で売上高60.8%増、最終利益53.2%増と第2四半期累計で過去最高業績を達成しています。

 

東証再編への対応

コーエーテクモは現在東証1部に上場していますが、東証再編の2022年4月以降、プライム市場を選択することを発表しました。

しかしながら、プライム市場の上場維持基準のうち、「流通株式数」「流通株式時価総額」「売買代金」は満たしているもののの、「流通株式比率」については、基準を満たしていないということが東京証券取引所から通知を受けたとしています。流通株式比率の定義を見ると、

「流通株式比率」=「流通株式数」÷「上場株式数」×100

「流通株式数」=「上場株式数」−(「役員所有株式数」+「自己株式数」+「上場株式数の10%以上を所有する者が所有する株式数」+(「役員以外の特別利害関係者が所有する株式数」)※)

※新規上場と一部指定時のみ算入。役員の配偶者及び二親等内の血族、役員・役員の配偶者及び二親等内の血族により議決権の過半数保有されている会社、関係会社及びその役員

としています。「前回東証市場再編について」の記事でも株式会社ゆうちょ銀行の発行済株式数の89%を日本郵政株式会社が所有しているとありましたが、コーエーテクモも同様、一部の株主が多くを保有しており、これが対応を求められることになります。コーエーテクモが12月2日に公表した「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ 」によると、筆頭株主の株式会社光優ホールディングスが所有割合50.35%、第2位株主の環境科学株式会社が7.47%を保有しているとされ、この2社の所有分は「役員以外の特別利害関係者が所有する株式」に該当し、流通株式にはならないことから、上場維持基準を満たすためには、両社が所有する株式を売却してもらうことが必要になります。

しかし、『一時的にまとまった数量の株式が市場に放出される結果、当社普通株式流動性及び市場価格に対する影響(株価の下落)が大きくなる』ため、純粋に売却すればよいという話ではありません。

 

コーエーテクモがどのような方法を取るかというと、

転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行する。

②①で得た資金をもとに、光優ホールディングス、環境科学からコーエーテクモの株式を購入。

③①で発行された社債の転換権を行使した投資家に対し、②で購入した株式を転換に当てる。

ということで、①を所有する投資家が一斉に転換権を行使することはないため、急激な株式の価格低下にはならないとしています。

 

◯市場の反応

急激な株価の低下とならないと記載しましたが、それでも市場ではCBの発行を嫌気して、12月3日は前日終値から6.6%下落しました。ちょうどオミクロン株による市場全体の押し下げと同時なので、どこまでがCB発行による効果なのかはわかりません。ですが、東証再編にはこの様なことが発生しうることは知っておく必要があります。

今所有している株は、来年4月以降どの市場に移行しますか?そしてその上場維持基準は満たしていますか?満たしていないのであれば、どの様な戦略を取ると思いますか?一度点検をしておくと良いかもしれませんね。