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「円の実力、50年ぶり低水準」というニュースを読む

先日、ニュースとなっていた「円の実力、50年ぶり低水準」というニュースについて、内容を見ていきます。

 

news.yahoo.co.jp

 

◯為替レートの種類

円の実力とは何で図るかというと、この記事では「実質実行為替レート」という指標で見ています。通常「為替レート」というと、円とドルや円とユーロ、といった2つの通貨を交換する際のレートを指しますが、これは「名目レート」と言います。一方で両国間の物価変動の違いを調整するものが「実質レート」となります。

例えば、1ドル=100円で昔から今まで変わらなかったとしても、アメリカでは昔りんご1個を1ドルで買えていたのが今では2ドルでしか買えなくなったとします。一方、昔も今も日本では100円でりんご1個を買うことができるとします。こうなると、日本人が100円を持って、アメリカへ行ったときに今ではりんごを買えなくなってしまいます。つまり100円の価値が昔と比べて今は下がってしまった、ということになります。

また、二国間、例えば円とドルの為替レートで円高となったとき、円とドルだけを比べれば円の価値が上がったということがわかりますが、世界全体を俯瞰してみると実は円の価値は変わっておらずドルの価値が下がったのかもしれません。このため例えばユーロや、人民元といった他の通貨も含めて円の世界的価値を見るものが「実効レート」となります。

そして、この実質レートと実効レートを組み合わせた指標が「実質実効レート」となります。実質実効レートが高いときには、海外のどの国に行ったときでも物が比較的安く変えることになり、購買力が強いということになります。一方で実質実効レートが低ければ、日本人は海外のものは手が出しづらくなり購買力が弱く、反対に外国人から見れば日本のものは安く、買われやすくなるということになります。

 

◯実効為替レートの推移

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日銀が発表している実質実効レート(赤実線)、名目実効レート(青点線)の推移が上図です。数字が大きいほど円高で、円の購買力が強いということになります。

基準となっている2010年付近で、名目実効レート>実質実効レートに転換しています。より正確に言えば、実質実効レートのピークであるバブル崩壊の1995年付近から、実質実効レートと名目実効レートの差が小さくなっており、この期間から今まで、諸外国と比べ日本の物価上昇が緩やかであった、ということが反映されているものということだと思います。

日本は製造業へのメリットから円安の方がよいとされてきましたが、日本は東日本大震災以降、原子力発電所の稼働停止によりエネルギーの自給率が下がっており、化石燃料の輸入頼みな状況がますます強くなってきています。資源高を背景に輸入額も増えていて、2021年の貿易収支は赤字となったとのニュースもあり、円の購買力が弱い中で、高い資源を買わなければならない、構造になりつつあります。

(参考)

manabinobi.hatenablog.com