ガソリン価格急騰で話題となっているトリガー条項について②
前回からの続き。ガソリン税の話題の回めです。
今回ようやくトリガー条項について見ていきます。
◯トリガー条項について
租税特別措置法の第89条を見てみると、
第八十九条 前条の規定の適用がある場合において、平成二十二年一月以後の連続する三月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき百六十円を超えることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同条の規定の適用を停止する。
つまり3ヶ月連続でガソリンの平均小売価格が160円を超える場合、翌月以降、揮発油税、地方揮発油税の特例部分の税を停止することが定められています。これが今回取り上げている「トリガー条項」になります。ガソリン小売価格が160円超が3ヶ月連続であるという条件を、銃の引き金(「トリガー」)として見立て、この条件を満たせば税金の特例部分の停止が実行される「条項」となっています。
◯トリガー条項が発動しない背景
しかし、すでに現在170円を超過していますが、なぜ適用されていないかというと、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律において、
と記載されているからです。つまり、トリガー条項の発動を東日本大震災からの復旧を背景に停止(凍結)しているということになります。
この背景を踏まえれば、トリガー条項の凍結解除の是非について議論をする際に、『ガソリン税の特例部分が地方自治体にとって重要な税収であるから』といった議論は完全にナンセンスといえます。地方自治体が東日本大震災の被災地を指しているならまだわかりますが、そうでないなら東日本大震災とは無関係であり、トリガー条項を凍結した理由と整合性が合いません。
一方で、ガソリン価格の高騰は「東日本大震災の復旧及び復興の状況」とも合わないので、今回の凍結解除案が上記第44条の記載にも整合しないのも事実。復旧及び復興が一定の成果があったとするのか、あるいは被災者支援のためガソリン価格を抑える目的とするのか、そういった凍結を解除する背景についても考慮が必要でしょうか。