円安が進行し119円台到達。日本銀行黒田総裁のコメント
本日はここ数日で急速に進行している円安についての話題。
まずはこの1年間のドル円の推移を見ていきましょう。
2021年9月くらいまでは1ドル108円~110円ほどっでした。そののち、アメリカの物価上昇が深刻化し、利上げ観測が高まると1ドル115円付近まで上昇していました。その後、年明け以降114円~116円といったところでした。
さてここ数日ですが、2022年3月10日に116円台に到達すると、11日に117円台、土日を挟んで14日には118円台そして、3月16日には119円台に達しました。1週間で115円台から119円台となっています。
この1ドル119円というのは、2016年依頼の安値水準とのことです。
円安が進行した背景として挙げられているのは、日米の政策金利の差です。
アメリカ連邦準備理事会(FRB)では16に日にインフレ抑制のためゼロ金利政策の解除、0.25%の利上げを発表。今後の見通しも含め、おおむね市場予測通りということで安心感から株価も回復し始めるという結果となりましたが、それはまた別の話。いずれにせよアメリカの利上げがとうとう始まるということで、ドルの魅力が増しました。
これに対し、18日に日本銀行の金融政策決定会合で金融緩和策維持が決定されました。つまり政策金利の引き上げは行わないということです。こうなると大雑把に言えば、日本の銀行に預けておくよりも、アメリカの銀行に預けた方が利率が良くなるということなので、日本円を売って、アメリカドルを買うという動きになります。ですから円安が進行するということになります。
金融政策決定会合終了後の、記者会見の黒田総裁のコメントを見てみましょう。
4月以降の消費者物価指数は2%程度の伸びとなる可能性があるとしながらも、大半が商品市況高に伴う輸入価格の上昇によるものだとし、金融引き締めは適切でないとの認識を示した。
既に携帯電話料金の値下げ効果を除けば、日本の消費者物価指数は2%が間近となっています。その中で円安が進むことは、日本の輸入品の物価が上がるということになります。加えて現在はロシアによるウクライナ侵攻を起点として原油、資源、穀物価格が上昇していて、
資源の大半を輸入に頼る日本にとって、商品市況高に伴う輸入物価の上昇は「企業収益や家計にマイナスの影響を与え、好ましくない」と述べた。
一方で、
「円安が全体として日本経済にプラスとの構造は変わらない」
最近の輸入物価上昇は、円安よりも資源価格上昇の影響が大きい
ということで、円安は容認しています。製造業を産業の中心としている日本にとって、円安は企業業績を上げる効果はありますが、それ以上に資源価格コスト上昇による圧迫が顕著です。
以前取り上げた円の実力値の話題でも触れましたが、円安によるエネルギーコストの高まりは、企業、家計ともにダメージが大きいものだと思います。特に家計へのダメージが深刻で、消費者心理が冷え込みお金を使わない、といったことにつながれば、内需産業は厳しくなってきます。一方で、高い技術力を持ち、海外で競争力のある商品を取り扱う製造業銘柄ですと、追い風になるでしょう。
ただ、企業業績がよくてもそれが給与に反映されなければ家計が一方的に苦しいだけですから、循環する策もほしいところです。