ロシア天然ガスのルーブル払い要求。その背景を考察。
ロシアのプーチン大統領がロシアから日本を含む非友好国への天然ガスの輸出をルーブルでの決済しか認めないとする方針の発言がありました。通常ドルもしくはユーロでの取引となるかと思いますが、一方的な契約変更の指示を意味しています。
これが実行に移されたときに何が起こるかを想像してみます。
ロシアは天然ガスの輸出国です。現在制裁を受けている状況下にありますが、EU、そして日本も天然ガスの禁輸にまでは至っていない状況下にあります。特にEUについてはロシアへの依存度が高く、天然ガスを停止してしまうとエネルギー逼迫し、自国の国民生活に影響が大きすぎるためです。
その様な状況下でのプーチン氏の発言です。
背景の1点は、ルーブルの価値向上だと思います。
ルーブル-ドルの年初来からの価格推移ですが、ウクライナへの侵攻以降、ルーブルは大幅に下落しました。年初来からおよそ27%ほど下落していることになります。
前提として天然ガスの取引が維持されているとして、この取引をルーブルでの支払いとすることができれば、輸入側はルーブルを買わざるをえません。この様な買い支えによりルーブルの価値は一定担保されることになります。
今日本も苦しめられていますが、自国通貨価値が下がると輸入品の価格がそれだけ高くなるということになり、自国内インフレが発生する遠因となります。このため、ルーブルを輸入側で買い支えてくれるということはロシア国内物価の安定化につながる物だと思います。
背景2点目は、海外に対する経済制裁への牽制の意味もあるのではないかと思っています。下にオランダTTF(DutchTTF)というヨーロッパにおける天然ガス相場の1年間のチャートを掲載しましたが、もともと供給量不足の中で上昇していたところでしたが、ウクライナ情勢を受け2月末頃から大いに高騰した事がわかります。
ウクライナ情勢の停滞を受け、高騰から少し落ち着いたところで、直近の一山がプーチン大統領の発言となります。ヨーロッパにおける天然ガスはロシアの方がイニシアティブを握っているということがよく分かると思います。