まなびの『び』

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新電力事業者の苦境とエネチェンジ(4169)

最近、新電力事業者の新規契約停止といった事象が多くなっているのですが、3月22日にはホープエナジーが、3月25日にはウエスト電力とエルピオ電力が撤退を表明しました。

 

◯なぜ新電力事業者が苦境に立っているのか。

新電力事業者の多くは自前で発電所を持っておらず、あるいは小規模しかなく、販売する電力のほとんどを日本卸電力取引所(JPEX)から調達しています。この調達価格が高値で推移していることが背景になります。

ここ直近はロシアによるウクライナ侵攻が深刻な背景となりますが、もともとそれ以前の特に2021年10月頃から、発電燃料となる天然ガス液化天然ガス(LNG)の価格は高い状態でした。

厳しい寒波の到来したため、さらに欧州では風力発電施設が天候不順により機能が低下し不足の電力を賄うために、火力発電の発電量増加による需要が増えたことが背景となります。

こうした背景から販売価格よりも調達価格が高く、売れば売っただけ損をするといった状況になっている新電力事業者が多数存在しているようです。そしてその様な事業者の一部では損失が拡大しないように新規の申し込みを停止するなどの対策に迫られています。

 

◯エネチェンジへの影響

電力見直しサイトを運営するエネチェンジにとっても今回の新電力事業者の撤退は影響が大きく、3月26日に『株式会社エルピオの電力小売事業のサービス停止及び当社業績への影響について』を公表しています。

これによると、

2021 年12月期において、エルピオ社からの売上高を584百万円計上しており、そのうち約39百万円がストック型収益(継続報酬)、約545百万円がフロー型収益(一時報酬)となっております。エルピオ社の当社経由のユーザー数(注2)は約3万9千件であり、当社全体のユーザー数(注2)38万7千件のうち約10%となっています(数値は2021年12月末時点)。 

となっており、エネチェンジにとっての重要なパートナーが撤退することがわかります。2022年12月期への影響として、

事業撤退がなされる4月30日以降の売上高としては、約58百万円(ストック型収益約41百万円、フロー型収益約17百万円)と見込んでおりました。

と発表しています。2月10日に発表した2022年12期の見通しとしては、売上高4,000百万円を見込んでいますので、1.4%ほどのビハインドが生じることになります。一方で、

想定約14万件のエルピオ社のユーザー全体に対して他の電力会社への契約切替キャンペーンをエルピオ社と連携しながら支援し、また新規顧客は他の電力会社へ送客を行うことにより、当該売上高見込みを維持して行く方針です。また、契約切替キャンペーンの結果によっては、ユーザー獲得が期初想定以上に進む可能性もあります。 

と、ポジティブ面も強調して発表しているのが印象的でした。

 

同様にエルピオでんきの様に事業者が撤退した場合には、そのユーザーは次の事業者を選定しなければならないことですから、今後エネチェンジにとってポジティブな流れになるのか、ネガテイブな流れになるのか、想像がつきにくいと思っています。

 

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年初からのエネチェンジの株価推移が上図ですが、赤円で囲った日が3月28日で上記エルピオでんきの撤退表明の翌営業日となります。この日は前営業日終値928円から150円マイナスの778円とストップ安となっています。市場全体としてはネガティブ印象が大きいようです。

直近3月1日にEV充電サービスの拡充のニュースをきっかけに急騰したものも続かず、急落した弱さを見せており、少なくとも現在はまだ底が見えない状況です。

 

過去のエネチェンジの記事はこちら

manabinobi.hatenablog.com