まなびの『び』

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サハリン2からのシェルの撤退について

ロシアのサハリン、日本では樺太と呼び名がありますが、この地域における石油、天然ガスの開発プロジェクト、それがサハリンプロジェクトです。※サハリンプロジェクトはその開発地域によって1から8までありますが、今回はサハリン2の話題です。

 

サハリンプロジェクトソビエト連邦解体後に経済を立て直す必要のあったロシアが外国資本を取り入れて開発をすることとなりました。その後のロシアの介入等もあり、サハリン2の開発はロシアのガスプロム社(50%)、イギリスのシェル社(27.5%)、日本の三井物産(12.5%)、三菱商事(10%)の出資にて行われていました。

 

ところが、ロシアによるウクライナへの侵攻を受け、シェルがサハリン2からの撤退方針を発表。日本、三井物産三菱商事がどう判断すべきか難しいところです。

当然に日本はロシアに対して抗議をすべき立場にありますが、一方で現在のロシアのウクライナへの侵攻はロシア対NATOという構図の中で、イギリスと日本は立場が違っている点がひとつ。

日本勢の撤退がロシアにとって痛手になるかどうか、つまり撤退する意味があるのか、ということも判断の難しさを助長します。日本にとってサハリンが重要な意味を持つのは日本からの距離です。中東から資源を運ぶことと比べれば圧倒的に近いのです。近ければ、輸送コストも安くすみますし、サハリンから日本へパイプラインを敷設することも距離的に可能です。

そして今回のウクライナ侵攻に対してロシアへの制裁を行っていない中国にとっても近い距離であるということは同様です。ロシア産資源は制裁によって西側諸国が購入量を絞っていることから価格が下がっており、サハリンプロジェクトから撤退することで空いた隙間を、中国がロシアに対して資金を提供することで入り込み、共同開発を行うことになります。中国にしてみれば資源を安く入手できるまたとない機会ということになります。

実際に4月22日には、シェルがサハリン2の権益について中国企業3社と交渉を始めている旨の報道がされました。

 

ロシアに対する制裁が始まった頃は、中国の動きが制裁逃れを助長するとしてアメリカが中国にプレッシャーが掛けていた印象ですが、最近は戦争の長期化もありややトーンが下がっているように見えます。(報道がされていないだけかもしれませんが。)

今回のシェル撤退後の権益が誰が獲得するか、については、これまでの制裁逃れよりも具体的にロシア支援及び中国の接近を許す格好になることから、アメリカや日本の動きが気になっています。