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日本郵船(9101)の決算分析

昨年度絶好調だった海運株、5月9日は日本郵船川崎汽船が決算発表をしました。今回は日本郵船の決算を見ていきます。

 

日本郵船の業績推移

日本郵船の2022年3月期は売上高が前期比41.8%の増収、営業利益が275.9%、経常利益が365.9%、最終利益が624.8%、それぞれ増益となっています。とてつもない伸び率を示しています。

なお同日決算発表の川崎汽船についても売上高21%増収、最終利益491%増益となっております。4月28日発表の商船三井が売上高28%増収、最終利益が687%増益となりました。

改めてなぜここまで海運株が絶好調だったのか決算資料からみていきましょう。

 

売上高

・ ドライバルクの市況高騰と自動車輸送の輸送台数回復を受け、不定期専用船事業で増収(2,929億円 増収)
・ 物流事業の運賃水準上昇と取扱量増加により増収(2,862億円 増収)

経常利益

・ 旺盛な需要が継続し、ライナー&ロジスティクス事業(定期船・航空運送・物流事業)で大幅な増益(6,658億円 増益)

不定期専用船事業もドライバルクの好市況と自動車輸送の輸送台数回復により増益(1,204億円 増益)

特に計上利益が大きいのは定期船事業です。要因として以下の記載があります。

コンテナ船(Ocean Network Express社)

・ 旺盛な輸送需要が続く中、港湾や内陸部の混雑は収束せず、需給逼迫が継続

・ 北米航路は港湾混雑の影響を受け、前年同期比で積高は減少するも、他航路を含めた総積高は微増に
・ 運航スケジュール維持や輸送スペース確保のための追加コストが生じたが、短期運賃の高止まりと共に⾧期契約の更新で運賃も上昇し、大幅な増益に

ここで触れているOcean Network Express社、頭文字をとって(ONE)は日本の海運3社(日本郵船商船三井川崎汽船)の共同出資で世界と戦えるコンテナ船事業とした企業です。日本郵船が38%、商船三井川崎汽船がそれぞれ31%の株価を保有しており、ONEの業績が好調であると、3社とも決算がよいということになります。

新型コロナウイルス禍からの経済の再開による物流需要がありつつも、アメリカを中心として港湾での流通混乱が発生し、運賃が高い状態が年間を通じて継続。この追い風が大幅な利益の享受を受けたことになります。

 

この状況が続くか、と2023年3月期の見通しでは、以下の記載となります。

・ 上期は、感染症による中国のロックダウンやロシア・ウクライナ情勢の影響で積高や運賃は若干弱含むも、需給逼迫は継続
・ 北米西岸の労使交渉の影響も注視していく必要あり

・ 下期以降は世界経済の減速により北米を中心とした需要が落ち着きを見せ、物流サプライチェーンの混乱収束と需給バランス正常化に伴い、短期運賃は大幅に下落する前提

・ 短期運賃の高止まりを背景にした⾧期契約の更改により、相応の運賃底上げに

「世界経済の減速」を見込んでおり、物流需要が低下。これにより需給バランスが正常化するとしています。このため、取扱量、運賃それぞれが2022年3月期比で低下し、結果2023年3月期は売上高は微増するものの、最終利益は▲28.6%の減益としています。

また、昨年度海運株が高騰した一つの背景に、好業績を受けて配当が大幅増したことがありました。2021年3月期の通期配当が200円だったのに対し、2022年3月期は1,450円でした。

しかし、2023年3月期は1,050円と減配を発表しています。