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三越伊勢丹(3099)の業績推移を見ながら新会計基準について

決算シーズンが続いていますが、これまで見てきた銘柄の中でも「会計基準を変更したことが影響して売上が減少している」という様な記載が見られます。今回の三越伊勢丹の2022年3月期の業績もまさに、その状況であります。

 

三越伊勢丹の業績推移

三越伊勢丹は百貨店の事業が売上のほとんどを占めていますので、新型コロナウイルスの影響を受けて2021年3月期以降の売上は大きく減少しているのですが、それにしても2022年3月期の売上高の減少が目立ちます。これに対して利益は急激に回復していることがわかります。これが2022年3月期から適用している「収益認識に関する会計基準」の適用によるものです。なお、旧基準で2022年3月期を計算すると、912,114百万円と対前年同期比で11.8%増収となっています。会計基準を変更したことにより、大きく売上高が目減りしてしまった、ということになります。

 

(注)ここから先、私は会計については詳しくない中、気になったので調べている程度ですので、間違っているかもしれません。気になる方はご自身で調べてください。

 

今回の会計基準の変更により、百貨店にとって大きく変わった部分が、本人と代理人という概念です。

収益認識に関する会計基準の適用指針によると、第39条

顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務であると判断され、企業が本人に該当するときには、当該財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識する

第40条

顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを当該他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断され、企業が代理人に該当するときには、他の当事者により提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する

つまり本人なのか、代理人なのかによって、何を「収益」(=売上)とするのかが変わるというものです。

すごく端的にいえば、本人の場合は商品の対価=商品代を収益とするのに対し、代理人の場合は、商品の提供により得られる報酬や手数料、売上の増加分が収益になります。

 

本人に該当するかどうかの判断については、以下3つの指標があります。

① 約束の履行に対して主たる責任を有していること

② 企業が在庫リスクを有していること

③ 企業が価格設定において裁量権を有していること

 

百貨店については、消化仕入れという取引形態で行われています。

通常ですとお店は予め商品を仕入れておき、その在庫から顧客へ販売をしますが、百貨店は顧客と売買を行った時点で商品を仕入れたこととして販売をする、という取引を行っています。

この取引形態を踏まえて新会計基準の話に戻ると、上記3つの指標のうち、②企業が在庫リスクを有している、というところを満たさないため、百貨店の取引は本人取引ではなく、代理人取引という扱いとなり、売上の増加分つまり「販売価格-仕入れ価格」を収益として会計を行います。

 

このため、これまでは売上がそのまま売上高として計算されていたところ、上乗せ分しか計算されなくなるため、売上が激減する、ということの様です。

 

このように会計基準が変わると、これまでと全く同じだけ取引を行っていても数字上は目減りをしてしまう、といったことがあるため、会計基準が変わるタイミングがいつか、ということが業績の推移をみるうえで重要になりますね。