まなびの『び』

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誰が貯蓄を持っているのか?〜日本の世帯の貯蓄構造〜

最近報道番組を見ていると、岸田首相の発言であった「貯蓄から投資へ」に対する報道が結構な頻度で取り上げられています。私が見ている番組では多くの場合、街の人の話として、「投資に回せるほどのお金がない」というコメントを載せて、若干否定的な内容になっていることが多く見受けられました。中にはコロナで所得が減った人も引き合いに出したりしています。

街の人の声は確かに事実なのでしょう。しかし一方で、もうひとつの事実として、二人以上の世帯における1世帯当たりの貯蓄の平均値は1,880万円もあるとのことです。

 

今回は5月10日公表の家計調査報告(貯蓄・負債編)を見ていきます。

なお、この調査においては貯蓄とは、銀行その他金融機関への預貯金、生命保険等、株式、債券、投資信託等の有価証券、社内預金や勤め先の共済組合などへの貯蓄も含める、としています。

www.stat.go.jp

 

◯貯蓄はどれだけされているのか。

2021年の二人以上世帯において、1世帯当たりの貯蓄残高の平均値は上記の通り1,880万円でした。中央値も見てみると、貯蓄「0」の世帯を除いた中央値が1,104万円、貯蓄「0」の世帯を含めた中央値で1,026万円でした。

これが勤労者世帯(世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯)で絞ると、貯蓄残高の平均値は1,454万円、中央値は貯蓄「0」世帯を除くと833万円、貯蓄「0」世帯を含めて784万円となっています。

 

◯どの様な世帯が貯蓄を持っているのか?

全体と勤労者世帯を比較した内容を見ると、勤労者世帯よりも勤労者世帯以外が多くの貯蓄を保有していることがわかります。勤労者世帯以外というと、世帯主が年金生活など無職であったりの、個人事業主、あるいは企業の役員であったりなどの世帯をさしています。

貯蓄残高別に世帯分布を見ると、構造がわかりやすくなります。1割強の世帯が貯蓄100万円未満ということになります。また、300万円未満までで、2割強。貯蓄の少ない世帯は多く、貯蓄の多い世帯は少ない反比例の様な構造になっています。

 

さらに世帯主の年齢別で見てみます。

  全世帯 ~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳~
貯蓄平均額 1,880 414 774 1,134 1,846 2,537 2,318

 

すると上表の通りで、50歳~59歳までの世帯がほぼ全世帯平均であり、これより若年の層は貯蓄額が少なく、60歳以上は貯蓄額が多いという構造であることがわかります。

 

次回は岸田首相の発言した1億総株主を実現するための課題についてみていこうと思います。