まなびの『び』

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そもそも利上げとは?②なぜアメリカは利上げをするのか?

前回に引き続き、利上げについての話題です。前回は利上げを行うとどうなるかについてみてきました。デメリットばかりの様でしたが、それでもアメリカは利上げを行っています。これはなぜでしょうか。

利上げによる物価調整

前回の内容の通り、金利を引き上げると企業も設備投資を控え、個人も消費意欲が落ち込みます。そうなると物の需要が下がっていきます。物の需要が下がれば、需要と供給のバランスにより価格が下がることになり、物価上昇を抑え込む事ができるようになります。

また他国との金利差によって為替にも影響を与えます。A国の金利が高く、B国の金利が低い状態であれば、B国にある現金をA国に預けた方がより多くの利息を得ることができるようになります。そうなればB国通貨を売りA国通貨を買う動きとなり、A国通貨が高くなることになります。そうなれば、A国にとっては

為替起因の物価上昇も抑え込むことができるようになります。

 

アメリカでのインフレの状況

これまでの利上げのメリットデメリットを踏まえた上で各国の中央銀行は、経済成長を犠牲にしても物価の調整を優先すべきという判断により、利上げに踏み切ったということになります。具体例としてアメリカを見ていきます。

アメリカでは6月の消費者物価指数は前年同月比9.1%と40年ぶりの高い数値となりました。ここまでインフレが進んでいる理由としては、ロシアのウクライナ侵攻による資源高の背景もありますが、雇用面の影響もあります。6月のアメリカの雇用統計によると、労働者の平均時給は前年同月比5.1%増加しています。また失業率も3.6%でしたが、昨年6月の5.9%と比べ大きく改善をしています。

アメリカの人件費スパイラル

新型コロナウイルスの流行直後、感染リスクを警戒して離職後に再就職を控える人が生じました。その後経済が再開されて企業が求人を出しても職場に戻る人が限定され、人手不足となりました。この様な賃金を上げて募集を行う必要に迫られ、労働者がより高額な賃金を求めて流動化する、労働者にとっての売り手市場が形成されたとされています。

この結果、増えた人件費コストを価格転嫁することで物価が上昇する、物価が上昇するので労働者がより高い給与を求める、といった悪循環が生じています。

また、経済が回復されたことにより、物の需要が高まったものの、物流業界で発生した人手不足により、貨物船が到着しているにも関わらず積荷を下ろす人がいないために荷物が届かないといったことが発生しました。これにより需要に対して供給が追いつかない状況となりました。物流の人手を増やすためにコストを増やして求人を行い、このため運送コストも上昇しました。

このような人件費コスト、物流コストといったことによる物価高にブレーキをかけるために、連邦公開市場委員会FOMCで利上げを行うことを決定した、ということになります。