まなびの『び』

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そもそも利上げとは?③日本は利上げをすべきか?

利上げについての話題、第3回目です。前回はアメリカが利上げを行った理由を説明しました。アメリカでは人件費コストが上昇し、これによる価格転嫁が発生している状況でしたが、日本はどうなのでしょうか。

日本の労働状況は?

厚生労働省が7月1日に公表した2022年5月の労働力調査によると、完全失業率は2.6%でした。2021年5月は2.9%と改善しているものの、もともとそこまで悪化をしている状況ではありません。

日本労働組合総連合会が7月5日に公表した2022春季生活闘争の第7回(最終)回答集計を参照すると、平均賃金方式での定昇相当込み賃上げ率が2.07%とのことです。増えてはいるのですが、アメリカと比べて大きくありません。さらに言えば、昨年も1.78%の伸び率でしたから、今年は高い数字ではあるものの、アメリカの様な労働者市場を背景とした極端に高かった数字とは言えないのではないでしょう。

また、あくまで労働組合がある会社のみの集計ですので、日本全体の賃上げを表現しているわけではないのですが、それでも日本の賃上げ率としては、アメリカと比べて低いことがわかります。

日本は利上げをすべきか?

ここからは人によって考え方が変わるものだと思いますが、日本が利上げをすべきかどうか、個人的には利上げはすべきではないと思っています。これまで見てきた通り、利上げは前提として経済成長を犠牲にすることになります。

日本の場合、企業物価指数は9.2%と高い上昇をしているのですが、消費者物価指数は2.2%にとどまっています。これはつまり、企業が価格転嫁をすることができていない、売り手である企業が利益を削っている状況にあります。特に中小企業は買い手である大企業に対し価格転嫁ができていないと言われていています。この様な状況下で利上げをしてしまえば、中小企業が当座資金の借入に苦労し、あるいは借入時の利息が大きくなり、さらに利益が圧縮。もしかしたら決定的なダメージを与えてしまう可能性があります。

また別の観点から言えば、可能性ではありますが、アメリカやヨーロッパ、あるいは中国で経済が停滞してしまった場合、日本での物価上昇の背景となっている資源高の勢いが抑制されることになります。こうなれば、利上げを経ずとも物価が、下がる可能性もあります。政策というよりかはラッキーパンチまちの状態ですが。

いずれにせよ、利上げを検討すべきなのは、いよいよ価格転嫁をしなければ企業が生き残れず、物価がさらに上がる状況になり、それによって従業員を維持するために賃金を上げる必要が生じることが、より顕著になってからでもよいのではないか、と思います。