四半期決算短信の任意化についての議論とプレナスの上場廃止。
上場企業は金融商品取引法によって有価証券報告書を提出する必要があります。これは企業の事業年度末第4四半期終了後に開示をするものですが、これ以外にも現行ルールでは四半期つまり3ヶ月ごとに四半期報告書を開示する必要があります。また有価証券報告書や四半期報告書の他、決算短信を四半期ごとに開示する必要があります。
これを見直そうという動きがあります。岸田首相が2021年10月の国会開会において、所信表明演説の中でも触れていましたが、先日金融庁が案を公表しました。
金融庁が発表した改定案は以下の通りです。
2024年度以降
第2四半期に開示する半期報告書は残し、第1、第3四半期は決算短信のみとする。
将来的な方向性
半期報告書は引き続き開示することが必須である一方、四半期短信を必須ではなくし、期中に発生した事実は適時に開示する。
といった将来の方向性も含めた制度変更案となります。
そもそもなぜ四半期報告の変更を検討しているのかと言えば、四半期ごとに開示される短期的な業績に投資家が注視することで株価が変動をし、その結果企業経営としても短期的な業績を追ってしまう。これにより長期的な視点での設備や人材への投資は行われにくくなる、といった課題認識からでした。
直近でも飲食店チェーン「やよい軒」や弁当点チェーン「ほっともっと」を運営するプレナスが創業家によるTOB、つまりMBOが成立しました。これにより既存株主の保有株はスクイーズアウトし、上場廃止となる予定となります。この背景としても中長期目線での経営改革を行うにあたり、短期での業績を求められる状況が阻害原因となるということでの決定でした。
では、今回金融庁が発表した将来的な報告製にある四半期短信の任意化は効果があるのでしょうか。私はそうは思えません。少なくとも私は購入する株式銘柄を選ぶ際には決算資料をなるべく目を通す様にしています。IR情報がよくでていたり、見やすい資料となっていたほうが企業の動きをイメージしやすく、そのほうが企業の成長を想像しやすいからです。任意化することで、仮に情報があまり出てこない企業があれば、その企業は投資家からすれば手を出しづらい、もっと言えば投資できない銘柄となるかもしれません。『期中に発生した事実は適時に開示する』といってもその基準がなければ、不利な情報が開示されずに気づいたら業績が悪化していた、といった事態も発生するかもしれません。
どの様な情報開示が適切か、企業にとっても投資家にとってもよいのか、さらに議論が深まれば良いと思います。