まなびの『び』

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なぜ雇用者数は増えたのに株価は上昇したのか。アメリカ雇用統計発表

6日にアメリカの雇用統計が発表されました。非農業部門の就業者数は前月から22万3000人増え、これは市場予想の20万人から上回りました。失業率も3.5%と低下しています。

昨年までの傾向として雇用者数の伸び、失業率の低下については、

人手不足が顕著であり従業員を雇用するために高い人件費が必要となる

⇒人件費コストが伸び商品の価格に転嫁されインフレが進む

FRBが利上げを進め、長期金利が上昇する。

という展開で、株価が下落するということがこれまでの流れでした。ところが発表後のアメリカの株価は上昇しました。下図はダウ平均株価指数の5日間チャートです。

6日は5日の終値から2.13%の上昇しました。

 

ナスダック総合指数についても6日は上昇。5日の終値から2.56%の上昇となりました。

 

なぜ、今回は昨年までと違う動きになったのでしょうか。注目されたのは平均時給の面の様です。今回の発表で平均時給は前月比0.3%と上場したものの、市場予想よりも下回りました。これが好感され、株価の上昇に繋がったということになります。

賃金コストの上昇がインフレをもたらすという流れからすれば、賃金コストにより直接的に影響を与えるのは平均時給の伸びの方ですので、こちらが収まりつつあるのであれば、より物価上昇にとってはグッドニュースということですね。

Bloombergの以下、記事を参照してみます。

www.bloomberg.co.jp

米連邦準備制度理事会FRB)元理事で現在はシカゴ大学ブース経営大学院の経済学教授であるランドール・クロズナー氏は「金融当局は雇用減速を望んでいるわけではない。望んでいるのは賃金上昇率の低下だ。それは持続的なインフレを懸念していることが理由だ」と指摘。この統計により、2月と3月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では「50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ではなく25bpの利上げが実施される可能性が高まったかもしれない」と述べた。

と取り上げています。政策金利を決定するFOMCが、今後の利上げスピードについて物価にかかるデータを見ながらという表現をしていますので、今回の労働市場のデータもしっかりと注意をして見ているものと思われます。

 

4日にはアマゾン、セールスフォースといったIT事業者が大規模な人員削減を発表していますので、これらのIT事業の成長性が心配されるところです。グッドニュースであることは間違いないのですが、これまで、そして今後の利上げは、どこまで景気に影響を与えていくのでしょうか。