IPEFの設立とTPPとの違い
5月22日よりアメリカのバイデン大統領が来日をしています。中国に対してアジアでのプレゼンスアップが目的と思われます。既に訪韓を終え、23日には日本で岸田首相との会談を行い、そして24日にはQUAD(日米豪印)での首脳会談も予定されています。
さて、今回のアジア歴訪に合わせ、23日にインド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)について発表をしています。これはインド太平洋地域において新たな経済協力の枠組みを設立するということになります。
参加国は、
アメリカ、日本、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
の13カ国となります。この13カ国において、
◯貿易
◯インフラ・脱炭素
◯税制・反汚職
という4つのテーマについて、ルールを設けて取り組んでいくということになります。13カ国は4テーマすべて参加する必要はなく、自国が参加したいテーマを選ぶことができるというのが特徴です。対中国として、アメリカを中心とした枠組みを設定し、アジアでの存在感を強化したい思惑が見えます。
インド・太平洋地域ということで言えば、近しい経済協定で環太平洋パートナーシップ協定(TPP:Trans-Pacific Partnership Agreement)というものがあります。こちらは、
ブルネイ、シンガポール、ニュージーランド、チリ、カナダ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、ベトナム、オーストラリア
の11カ国で構成されています。当初アメリカがTPP設立に向けて旗を降っていたのですが、トランプ大統領就任後、TPP加入を見送ったという背景があります。TPPは、加盟国間の関税を撤廃する自由貿易を目指したものですが、関税は自国の製品を他国に販売することには有利ですが、他国の商品が自国の産業を破壊する可能性を孕んでいます。トランプ政権下のアメリカは、自国の労働者を守る目的で参加を見送ったのでした。一方で中国が参加を申請するなど、アメリカからするとむしろアジアでの存在感を薄める内容になってしまった印象です。このため、これに代わる経済圏としてIPEFの設立につながります。
というのも今回のIPEFの設立に際し、関税の撤廃は対象となっていません。つまり、アメリカにとって都合のよい協定を作り直している状況ということになるのではないかと思っています。
まだ中身がよくわからないことが多いのですが、果たして効果がある経済協定になるのでしょうか。