まなびの『び』

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天然ガス先物価格に起こった異変

6月14日、アメリカの天然ガス先物価格が2割弱と大きく下がるという事象が発生しました。一方同日のヨーロッパでは、先物価格が2割弱上昇しています。同じ天然ガスという物質なのにもかかわらず、アメリカとヨーロッパでこれだけ価格が反対に動くということは、一見非常に不思議な話ですが、これはアメリカからヨーロッパへの天然ガスの輸出量が減少するということへの恐れから、この様な先物価格の動きになったものです。

つまり、アメリカからの輸出量が減ることでヨーロッパでは天然ガスの供給量が減り不足することで価格が上昇する。一方でアメリカでは輸出できない分がアメリカ国内で過剰になり、価格が下落するということです。

 

なぜこの様な事になったかといえば、アメリカの液化天然ガスプラントの運営会社フリーポートで火災が発生した事によります。この火災現場が輸出用のプラントであることから輸出が停止し、停止した分がアメリカ国内に振り分けられることになりました。先の天然ガス価格の変動は、輸出用プラントが一部再開されるまでに3ヶ月、フル稼働は2022年度後半と発表したことによる値動きです。これがその通りとなれば、事態は長期化しそうです。

 

日本も他人事ではなく、東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資で運営されているJERAや、関西電力大阪ガスといった企業が、フリーポート社から液化天然ガスを調達している様です。日本が輸入する天然ガス総量から考えると調達量は多くないものの、日本を含むアメリカ以外の地域で天然ガス価格の上昇することで、またエネルギー価格の上昇に繋がっていきます。

 

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアからの輸入を削減し、替わりにアメリカからの輸入に切り替えをしつつあったヨーロッパにとってはますます辛い状況になってしまいました。ヨーロッパではこれまで資源価格の上昇理由がいくつも重なっている状況になります。ただでさえ上昇している天然ガス価格の下がる理由がなくなってきてしまいます。

完全に妄想ではありますが、ヨーロッパ側が音を上げて、経済制裁解除を条件とするロシアへの休戦申し入れを行う、といったことも考えられるとも思います。それだけ、ヨーロッパのインフレリスクは深刻となってしまうかもしれません。