ノルドストリームによる天然ガスの供給ついて
ロシアからバルト海を経由し、ドイツまで伸びる天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」。7月21日に供給再開のニュースがありましたので、今回はノルドストリームについて触れていきます。
「ノルドストリーム」は天然ガスの産出国であるロシアから大消費国のドイツまで天然ガスを運んでいます。ドイツは2000年ごろに脱原発政策へ舵を切っており、代替となるエネルギーが必要でした。そのドイツへ天然ガスを運んでいるのがこのノルドストリームであり、ドイツが天然ガスのおよそ半分をロシアから輸入をしていました。もともとロシアからの影響力が大きくなることについて、アメリカが懸念をしている圧力をかけるような面もありました。
ロシアがウクライナへの侵攻した後も、供給は続けられていました。侵攻直後、ロシアへの制裁にドイツが反対していたことも、このような背景に基づくものです。
6月15日にロシアはドイツへの天然ガス供給量を通常の40%減らし、翌日には通常の60%まで減らしました。ロシア側企業のガスプロム社の発表では、設備故障があり、カナダに修理を依頼しており返却を求めているとのことでした。
その後、例年夏の時期に実施されている定期点検に入ります。通例10日間供給を止めて行う点検でしたが、今年は7月11日から開始され、例年通り供給がストップした形になります。
安全点検を終えても、天然ガス供給が再開しないのではないか、といった懸念もドイツ政権にはありました。そのような中で、10日間の点検が無事終了し、今回供給が再開された形になります。ただし、その供給量は点検前と同じ40%程度となりました。
ロシアはこのノルドストリームを利用してドイツに圧力をかけ揺さぶることができる状況です。特に天然ガスの需要が高まる冬に向けて、ロシアは天然ガスを武器にする可能性があります。ドイツも一定の天然ガス備蓄があるものの、最悪シナリオでは1月末にその貯蔵量は0%となる試算とのこと。
ヨーロッパ連合(EU)は20日にロシアから天然ガスの供給停止に備え、8月から翌3月までの間に15%減らすことを目標とすることを加盟国に提案しています。需要の高まる冬に向け、天然ガスを巡る駆け引きが本格化していくではないでしょうか。