まなびの『び』

投資運用、業界研究、時事、その他学んだことを

原油先物がウクライナ侵攻前の水準に

ロシアがウクライナに侵攻して後に、ロシアへの経済制裁もあり原油先物は大きく上昇をしていましたが、ようやく落ち着きはじめ、とうとうウクライナ侵攻前の水準にまで戻ってきました。

このブログを書いているのは5日の20時ごろですが、NYのWTI原油先物価格はおよそ1バレル88ドルほどです。これはおよそ2022年1月末ごろの水準ですが、ロシアのウクライナ侵攻は2月末からとなりますので(チャート上鋭く上に突き出している)、たしかにそれ以前の水準ということになります。

なぜここまで原油先物価格は下がったのでしょうか。

 

原因としては、世界的な景気減速の懸念があり、原油の需要が減少することが想定されていることです。ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアへの経済政策もあり供給面が不安視され、原油価格は上昇してましたが、欧米の利上げ政策の結果経済成長の減速が懸念されることになりました。不況になり企業が生産を抑えるようになればエネルギーとなる原油の消費量は減ることになります。このため、需要が減り、供給過多の状態となるため価格が落ち着くことになります。

 

また、アメリカにとって夏はドライブシーズンとされていて、ガソリン需要が旺盛な時期ですが、今年の夏は需要が伸び悩んでいるとの足元の状況も原油価格の下落に繋がっています。ガソリン価格が高騰していることで、遠距離移動をしなくなった、とされており、ガソリン在庫が余っている状況とのことです。

 

この原油価格の下落も踏まえての決定だとおっもいますが、OPECプラスは3日に行われた会合で、9月の供給量は10万バレルの増産としてました。7、8月は60万バレルの増産でしたが、それ以前にペースを戻った形になります。

産油国にすれば上述の通りで需要が落ち込みかけている現状、増産を続ければただの原油の安売りとなってしまうことから、増産には慎重になるものと思います。需要が減る分、供給を絞ってできるだけ高く売りたいというのが本音ではないかと想像します。

 

一方で目線を変えると、原油価格の上昇が世界の経済の元気をなくしているインフレの要因となっている面もありますから、今の原油価格の下落はこれまでとは反対にインフレを落ち着かせることになります。こうなれば利上げペースが減速し、リセッション懸念も減少することになるでしょう。

 

このように考えていくと非常に難しくなります。改めて上のチャートを見ると、実はウクライナ侵攻前から原油価格は上昇傾向にありました。先に乗る度ストリームの記事で書いた通り、ヨーロッパにおいて天然ガスの供給が絞られる可能性もあり、果たして原油価格の「適正価格」はどの程度なのでしょうか。