まなびの『び』

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ウクライナの穀物輸出が再開〜大穀倉地帯ウクライナ〜

ロシアのウクライナ侵攻により、様々なコモディティ価格が上がりましたが、その大きく値上がりしたものの一つが穀物です。今回は改めてウクライナ侵攻の影響を受けた穀物の話に触れていきます。

 

そもそも世界3大穀物というものがあります。日本人に馴染み深い「米」、パンや麺類の「小麦」、そして「とうもろこし」です。このうち、「小麦」と「とうもろこし」はウクライナとロシアが大生産地となっています。

総務省統計局の世界の統計(2022)(https://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.html)を参照すると、小麦ととうもろこしのランキングは次の図の通りです。

いずれの穀物ウクライナとロシアがトップ10にランクインをしています。ウクライナからシベリア南部にかけて、黒土(チェルノゼム)と呼ばれる肥沃な土壌が広がっていて、農業が盛んな地域です。

こうした地域間での軍事衝突により穀物の輸出が減り、穀物価格が一気に上昇したというのがこれまでの流れです。

上図は小麦先物価格の1年間のチャートですが、侵攻開始した2月末ごろから、価格が急上昇したことがわかります。

これにより影響を大きく受けたのが新興国だと言われています。アフリカ諸国等ではもとからロシア、ウクライナに小麦を依存している状況でしたが、輸入が停滞し、国連食糧農業機関が警戒を示していました。また、特に収入が貧しい国々では、生活費に占める食費の割合が高い傾向が強く、穀物価格の高騰はダイレクトに生活費の高騰に繋がります。

これによりインフレに苦しむという構造となっています。

 

その様な中で国連とトルコが仲介し、ウクライナとロシアがウクライナ穀物輸出の再開に基本合意がなされました。8月3日には、侵攻後第一号となるトウモロコシを載せた貨物船がトルコに到着し、ウクライナ、ロシア、トルコ、国連の4者の検査が行われ、無事終了しています。ひとまずは安心感がありますが、それ以前にロシアは合意のあった翌日に貿易港のオデッサを攻撃するという揺さぶりをかけたこともあり、今後が安定して食料事情を回復できるか、ロシアの動きが握っている状況にあります。