まなびの『び』

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健康保険組合の赤字が過去最大。今後の改正案とは?

今回は健康保険組合の赤字についてのニュースを見ていきたいとお見ます。

 

これは2023年度の予算集計を健康保険組合連合会が発表したもので、2022年度の経常収支の赤字額が2,805億円に対して、2023年度は5,623億円になる見込みとして、倍増となります。

健保組合予算、過去最大の赤字 高齢者医療への拠出金増で 健保連(時事通信) - Yahoo!ニュース

この要因として、高齢者医療への拠出金の増加が挙げられています。

 

この要因が事実だと思いますが、今後高齢者の比率はさらに増えていきますので、なかなか現行制度のままですと、今後赤字はさらに拡大することが想像されます。健康保険組合の保険料は、従業員と企業が負担しますが、つまり家計負担が増えることになっていきます。

 

その様な状況下で、現在国会で健康保険法の改正が議論されています。全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための
健康保険法等の一部を改正する法律案の概要(https://www.mhlw.go.jp/content/001056106.pdf)によると、

高齢者医療制度の見直しについては、以下の通り記載されています。

後期高齢者の医療給付費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うため、後期高齢者負担率の設定方法について、「後期高齢者一人当たりの保険料」と「現役世代一人当たりの後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるよう見直す。
② 前期高齢者の医療給付費を保険者間で調整する仕組みにおいて、被用者保険者においては報酬水準に応じて調整する仕組みの導入等を行う。
健保連が行う財政が厳しい健保組合への交付金事業に対する財政支援の導入、被用者保険者の後期高齢者支援金等の負担が大きくなる場合の財政支援の拡充を行う。

現役世代の負担上昇を抑えるため、高齢者が保険料を負担する様に見直しとなっています。これにより後期高齢者の保険料が引き上げられます。

 

今回の改正では、出産一時金へ拠出することも議論されています。今後の高齢者、そして出産をどの様に支えていくべきか、これについては非常に難しい問題です。

 

自分は現役世代であるので、さらに負担が増えるのは厳しいですが、自分が高齢者になったときを考えると、そちらに負担が増えるのも困りものです。

拠出を増やすよりも医療費を減らすためにはどうすればよいか?を議論していくのも非常に重要だと強く感じます

アップルが預金に参入。日本へは?

今回の記事では、アメリカのアップルが預金業務へ参入するというニュースについて考えていきたいと思います。

news.yahoo.co.jp

アップルが提供する預金サービスは、金利4.15%とアメリカ国内の銀行が提供している金利平均の10倍の水準とのこと。今アメリカでは政策金利が上昇しているので、他の銀行でも預金金利が高いのですが、それでも今回のサービスがかなり高い水準です。

ちなみに、現在、日本の三菱UFJ銀行普通預金金利は年0.0010%となっていますので、4,150倍となります。

預金サービスを提供するのは、アップルのクレジットカードのアップルカードの利用者に絞っていて、クレジットカードと預金講座の連携も図っているものと思われます。

 

個人的に、決済サービスを提供することは企業にとって非常に強みがあると思っていて、サービスをECで提供する際に端末に決済機能がリンクすれば、利用者はシームレスにサービスを享受することができます。悪く言い換えれば、お金を払うことがスムーズですので、お金を利用した感覚がなく、「使いすぎ」となるおそれもありますが、企業にとって見れば、より多くのお金を落としてくれる可能性があります。また、他社への移行もしづらくなります。これら利点がアップル側にあるのではないかと思います。勝手な推測ですが。

 

では、日本の銀行業にもアップルが参入するでしょうか。日本の金融サービスは参入障壁が高く、規制も多いのですぐに入ってくるのは難しいのではないでしょうか。とはいえ、日本はiPhoneユーザーの比率が多く、参入できたときのメリットは大きいのではないかと思います。

一方で、仮に日本に参入できたとして、もしアメリカ並みの4%程度の金利を提供できれば魅力は大きいですが、日本は政策金利が上昇していないため、アップルにとって見ればコスト増となります。アメリカ並ではなく日本の銀行の10倍程度として、0.0100%の金利を提供するとします。

仮に10万円を預けたとして、アップルであれば年間10円、上述の三菱UFJ銀行であれば年間1円です。10倍ですので魅力は大きいのですが、個人からすればインパクトに欠けることになります。

参入するとしてアップルがどの様な未来図を描いていくのか、興味ありますね。

日経平均が年初来高値を更新。

ここ数営業日、日経平均が強く終値ベースで年初来高値を更新しました。

4月18日の終値は28,658円76銭となり、前営業日から0.51%上昇し、直近高値の3月8日の終値を超えました。これ以降、シリコンバレーバンクの経営不安から始まる金融不安により急落しましたが、そこから回復したことになります。

上昇した背景は、金融不安が後退した中で、ウォーレン・バフェット氏の発言から、日本株式に注目が集まっていることが言えるかと思います。

manabinobi.hatenablog.com

上の記事でも見た伊藤忠の株価のその後を含めた推移を見ると、以下の図の通りです。

その後も伊藤忠株は好調を維持し、18日の終値は4,526円と、前回見た12日の株価からさらに200円(4.7%)上昇しています。やはり強い動きだということがよくわかります。

 

アメリカでの景況感が予想を大きく上回る内容だったため、アメリカ株式市場も上昇しこの流れを受けたことも、日本株式が上昇した背景にあります。

日本も決算シーズンに差し掛かっていますが、ゴールデンウィークがあり、この期間中に最後の利上げとなるか、とされる5月FOMCが開かれ、またゴールデンウィーク明けには決算発表をする企業が大量にありますから、様子見にもなってくるかもしれません。

 

3月のアメリカ消費者物価指数が発表

アメリカの消費者物価指数が発表されました。2023年3月の前年同月比が5.0%となり、前月の6.0%からさらに減速しています。下図は過去2021年6月から推移を表示させているのですが、過去最低値となっています。市場予想も5.1%でしたらからそれよりも低い結果となっています。

Bloombergの記事(米CPI、コア指数の伸び小幅鈍化-FOMCは利上げ軌道維持か - Bloomberg)によると、『労働市場の堅調継続やOPECプラスの減産などを踏まえれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は来月に0.25ポイントの追加利上げを決定する見込み』と5月会合での0.25%の利上げの可能性が高いとしています。

今後の政策金利の最高到達点の予想では、残り1回の利上げで到達するため、ここで終了し、そのまましばらく維持をするか、近く利下げを始めるのか、というところです。一旦利上げの終了に向けて、その判断がしやすいCPIの結果だったのではないでしょうか。

今回のCPI発表はグッドニュースではありつつも、ダウ平均株価の反応は芳しくありませんでした。終値ベースで前営業日から▲0.11%の下落となりました。もともと市場0.25%の利上げで織り込まれているものから変わりはない、ということでしょうか。

 

懸念があるのは、やはり3月にアメリカとヨーロッパで起こった金融不安です。

何を例に挙げるのがよいかわからないですが、KBW地方銀行指数の推移を見てみると、2023年3月にシリコンバレーバンクの経営不安をきっかけに急落すると、その後もずるずると下がっていっています。先に挙げたダウ平均株価の推移とは動きが異なることがわかります。銀行の経営不安が続けば、景気後退が近づいていきますので、まだまだ安心ができるとは言いにくいかと思います。

ウォーレン・バフェット氏の発言の結果

ウォーレン・バフェット氏という投資家が11日に日本の株式の追加投資について触れて話題になっています。

 

ウォーレン・バフェット氏は御年92歳でありながら、非常に有名な投資家です。バフェット氏の投資手法としてはいわゆる「バリュー株投資」と呼ばれているもので、割安と判断される株式を購入し、その価値が上昇したときに売却するという手法です。一見非常に簡単そうに感じますが、今は割安とされている銘柄の価値が将来戻ってくることを予想する必要があり、必ずしも誰もがマネできるものではないと思っています。なぜ割安になっているのか?をしっかり分析しないと、実は将来性がなかったり、割安さをみる指標の一つであるPBRの影響のないところで、財務状況が悪かったりなどの銘柄を掴む可能性もあります。この手法を得意とするバフェット氏が日本株を買いたいと発言したことから、日本株式市場に注目が集まるわけです。

これにより日経平均でみると、発言のあった11日に1.05%、12日にも0.57%と連騰しています。

中でも商社株については、以前から保有比率を高めていたところであり上昇しました。例えば伊藤忠を見てみると、11日に2.98%、12日に1.79%となっています。

商社といえば輸出入のイメージが強いですが、例えば海外の企業へ投資、子会社化して成長をしていくといった投資会社的な側面があり、これがバフェット氏の率いるバークシャー・ハサウェイ社とビジネスモデルが似ている点と言われています。だからバフェット氏も成長を見込んで商社株を購入していったとされています。

今回の発言アイでは商社株の比率を高めたとともに、他の投資先についても含みを持たせているため、次の候補と想定される銘柄にも注目が集まっています。ということで、海外に強いバリュー株が今後の主役になっていくかもしれませんね。

植田体制の日本銀行がスタート。果たして今後は。

植田和男氏が日本銀行の総裁に就任しました。10日に早速就任後初めての記者会見がありました。今後の方針として重要な発言となります。

 

植田氏は、これまで行われてきた金融緩和政策は維持する方針を発言し、また国債の買い入れにより長期金利を誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC:長短金利操作)についても、継続を支持。これら政策によって2%のインフレ目標の達成に向けて進むことになります。つまり、黒田総裁と方針は変わりません。

一方で、これら政策について、2%の見直しについても触れています。

基調的なインフレ率が本当に安定的、持続的に2%に達する情勢かどうかを見極めて、適切なタイミングで正常化にいかなければいけないし、それが難しければ副作用に配慮しつつ持続的な緩和の枠組みを探る。長い目で点検や検証があってもいいと思う。」(植田和男日銀総裁「理論・実務の両面で尽力」 就任会見要旨 - 日本経済新聞

より)

 

これによって当面の緩和政策を維持することが前面に出されたことで、特に為替市場が反応しました。

直近の1ヶ月のドル円チャートですが、赤い楕円でマークした円安がおおよそ植田新総裁の記者会見のタイミングとなります。20時ごろには132.3円ほどでしたが、23時過ぎには133.8とおよそ1.5円ほど一気に円安が進むことになりました。それだけ、今回の総裁の交代により方針の転換が期待されたものと言えます。

ただし、上述の引用の通り、植田総裁は今後の点検、検証については肯定しているため、落ち着いた後の政策転換の余地を残しています。この時期については触れていないため、実はすぐそこという可能性もあります。

やはり気になるのは、これまでの金融政策、とりわけYCCによる債券市場が正常に機能していない(国債の発行残高の過半を日銀が保有している)状況、また株価を押し上げたETFの買い入れは、売却しきれないほどになってもいます。これらの出口をどうするか、非常に気になるところです。

企業倒産数の増加。ゼロゼロ融資の返済の本格化へ

企業の倒産数が3年ぶりに増加しているというニュースについて見ていきたいと思います。該当のニュースは以下となります。

企業倒産の「潮目」変化、2022年度は3年ぶり増加 「社会保険料」「コロナ融資」重荷に―2022年度企業倒産(帝国データバンク) - Yahoo!ニュース

 

記事によると、2022年度の動産件数は6,799件。前年度(2021年度)から883件上回ったということで、約15%増加しています。3月単月でみると36.3%増ということで倒産数は増加基調となっているとのことです。

増加している要因として、

・物価高

・人手不足

・コロナ融資

・円安

が挙げられています。社会情勢によるコスト増に加え、「コロナ融資」が重くのしかかっているとしています。「コロナ融資」とは、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、政府が企業を支援した実質無利子・無担保の融資を行っていました。これが「ゼロゼロ融資」とも呼ばれるもので、この融資のおかげで、2020年度、2021年度と企業の倒産は少なく抑え込まれていました。この融資が始まってから3年経過し、本格的な返済がこれから始まるとされています。

また、物価高によりコストが高く日常の支払いが増えている中で、直近では黒字でありつつも、資金調達が間に合わずにキャッシュが不足することで黒字倒産が発生する事象も増えているようです。

事業を継続するためにどの様な支援ができるのか、ただしゼロゼロ融資のようにただ企業を存続させるための資金供給ではなく、事業転換をめざす様な支援ができると良いですが。。。理想論でもあります。