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石油備蓄放出の報道について

先日より話題には上がっていましたが、直近の原油価格の高騰を受けて、アメリカからの要請に応じる形で石油の国家備蓄の数十万キロリットルを放出することを、11月24日に正式に表明されました。

 

そもそも石油備蓄というのは、石油の備蓄の確保等に関する法律に基づいて備蓄をされているもので、この法律は1975年に制定されています。

 

石油の備蓄の確保等に関する法律の第一条において、法律の目的を以下の通り記しています。

第一条 この法律は、石油の備蓄を確保するとともに、備蓄に係る石油の適切な供給を図るための措置を講ずることにより、我が国への石油の供給が不足する事態及び我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じた場合において石油の安定的な供給を確保し、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的とする。

 

1973年に第四次中東戦争がはじまったことを契機として、第一次オイルショックが発生しています。これを背景に石油備蓄が行われるようになっています。これまで湾岸戦争東日本大震災といったあくまで緊急事態に応じる形で放出をしてきた様です。

 

総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会報告書(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/20210512_report.html)によると、

石油備蓄の数量については、IEAにより石油輸入量の90日分とされていることに加え、石油備蓄法に基づき、現在、国家備蓄については産油国共同備蓄の2分の1と合わせて輸入量の90日分(IEA基準)程度に相当する量、民間備蓄については消費量の70日分に相当する量、をそれぞれ下回らないこととされている。2021年2月末現在、国内消費量の244日分(IEA基準では輸入量の192日分)に相当する石油備蓄を保有している。 

(※IEA:国際エネルギー機関

 

としていますので、現時点で石油備蓄量の目安からみると、備蓄過剰な状態です。平時においても備蓄石油を古いものから新しいものに入れ替えが発生するため、その古いものを前倒しで処分するということの様です。

今回売却をするとしている数十万キロリットルという石油は日本国内使用量の数日分ということなので、想定としては緊急事態発生時に発生時に石油が不足するという事態とは切り離しているものと思われます。しかし、今回は原油価格高騰を避けたいアメリカの要請という異例対応になるので、その実績が残ってしまうのが一番影響が大きいものと思っています。

脱炭素化ブームの流れの中で、石油産出国からするとなかなか算出量は上げにくい状況が続き、今後も同様に石油価格高騰が発生しやすい状況は継続することが予想できます。今回の実績が、高騰すれば石油備蓄は放出するもの、という考え方にならないか危惧します。