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大幸薬品の決算発表 〜見通しが大外れ、急成長からの急落〜

本日は大幸薬品についての話題です。大幸薬品は先日2月18日に決算発表をしましたが、かなり厳しい内容となっています。詳細を見ていきます。

 

大幸薬品の業績とこれまでの売上推移

 

大幸薬品 売上高 営業利益 経常利益 最終利益
2022予測 - - - -
  対前年増率 #VALUE! #VALUE! #VALUE! #VALUE!
2021 11,299 -4,947 -6,131 -9,594
  対前年増率 -35.7% 赤転 赤転 赤転
2020 17,582 5,650 5,454 3,851

 

2021年12月期は、売上高▲35.7%、利益は赤字となりました。どうしてこのようになったのか詳細を見る前に、この数年の大幸薬品の売上の推移を見てみます。

 

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2020年にそれまでの3月決算から12月決算へ変更したことから、2020.12は4月から12月までの9ヶ月間の売上高となります。2018年3月期から2020年12月期まで急成長を見せてくれていたことがわかります。そして今回の発表となる2021年12月期で急落している状況です。

 

大幸薬品の製造製品

大幸薬品のメインの製品と言えば、ラッパのマークでお馴染みの正露丸です。日露戦争の時代に始まり、露西亜(ロシア)を征する、で「征露丸」転じて「正露丸」となり、また陸軍の伝達用のラッパから、ラッパのマークの正露丸となりました。大幸薬品はこの製造販売権を継承しています。

正露丸は商品名というよりも一般名詞で、他の薬品会社でも正露丸は販売していますが、ラッパのマークと言えば大幸薬品正露丸を指します。

正露丸そしてその姉妹品のセイロガン糖衣Aが大幸薬品の主力商品の一つです。

 

そして、2005年から販売が開始された二酸化塩素の散布による空間のウイルスや菌が除去される「クレベリン」と、除菌スプレーや除菌シートといったブランド「クレベ&アンド」。これが新型コロナウイルスの流行により注目を浴び、人気商品となりました。

 

2020年12月期の売上高約175億のうち、正露丸およびセイロガン糖衣Aで24憶、クレベリンおよびクレベ&アンドが140億となっています。

 

大幸薬品の誤算と消費者庁の指摘

2020年12月期の売上高の大半を占めたクレベリンですが、1回目の緊急事態宣言の時期には、ドラッグストアから除菌グッズやマスクなど、店頭から姿を消すほど売れていた記憶があると思います。このため需要に対応できる様、生産能力を強化し、増産を行っていました。

2020年12月期の決算短信での「今後の見通し」によると、

当期の需要急増の反動減の影響を見込んでおります。

としながらも、「クレベリン」を含む感染管理事業セグメントの2021年12月期の売上高予想を176億円としていました。

しかし、結果はより残酷でした。

当社グループは衛生管理製品「クレベリン」の安定供給に努めるため、前期より生産能力向上やサプライチェーンの強化に注力し、また急激な需要増加に備え、手厚く商品の在庫を確保するとともに、人員体制や拠点の充実を図ってまいりました。しかしながら、当社グループが想定した衛生管理製品の需要高騰は長くは続かず、当期においては急激に低下するものとなりました。この結果、大規模な供給に備えた当社グループの生産設備と在庫については、短期の間に過剰な状態に転ずるものとなりました。

例年ならばインフルエンザの流行等により需要が高まる年末にかけてのシーズンも振るわず、販売の動向はさらに計画を下回るものとなりました。

大幸薬品の想定は、大いに外れ、せっかく用意をした生産体制や商品在庫は意味をなさない形となってしまいました。これにより、24億円の特別損失を計上しています。

 

さらに、2022年1月20日消費者庁より、「クレベリン」のうち4商品について、「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」との表示に合理的根拠がなく、優良誤認表示にあたると指摘をしました。これに対し、大幸薬品

本措置命令については不服と考えており、今後法的措置を講じていく予定でおりますものの、感染管理事業売上高の1割程度を占める当該対象の商品については一定量の返品が見込まれます。このため、本件に関して見積もった返品額相当を含め699百万円を、当連結会計年度末に返品調整引当金繰入額として計上致しました。

と返品対応の資金計上を行っています。私は会計実務には詳しくないのですが、1月20日消費者庁から指摘があって、返品が想定できるのは期が変わってからにも関わらず、前期に繰り入れることができるものなんですね。

 

大幸薬品の決算発表をまとめると、

◯売上高:需要大幅減により商品が売れず。

◯営業利益:今後発生する返品対応、生産能力強化費用が重し。

◯最終利益:商品在庫の処分による特別損失を計上

と、幾重にも重なるマイナス原因により、今回の厳しい内容の決算となってしまっています。感染管理事業の消費者庁の指摘による影響が見通せず、今後の業績予想も未発表となりました。

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この5年間のチャートが上図ですが、2020年8月をピークに現在がおよそ4分の1ほどまで下がっています。

この決算発表が行われたのが2月18日(金)とこの記事を書いているタイミングでは、市場の反応は見れませんが、果たしてどうなるのでしょうか。