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厚労省から2022年の実質賃金が発表される

2月7日に厚生労働省から毎月勤労統計調査の2022年12月速報および令和4年(

2022年)分結果速報が公表されました。この毎月勤労統計調査とは、厚生労働省が賃金、労働時間、雇用に関しての調査で、常用労働者5人以上の事業所を対象に郵送またはオンラインによる調査を行うものです。これを見ると給与がどの様に伸びたか、を確認することができるものとなります。

早速令和4年分結果を見てみます。(毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報|厚生労働省

これを見ると、現金給与額(きまって支給する給与(定期給与)と賞与、つまりボーナスなどである特別給与の合計額)は前年に対して2.1%の増加となりました。内訳を見ると、定期給与は1.5%の増加、特別給与は5.1%となっています。いずれも上昇はしているのですが、特別給与が大きく伸びていることがわかります。

特別給与は上述の通りいわゆるボーナスを含みます。2022年度は円安により業績が好調だった企業が多かった印象ですが、それがボーナスつまり一時金として従業員へ支給された、あるいは最近のインフレに対してインフレ手当として一時金が支払われた、などの結果に基づくものかと想像します。

 

現金給与額は前年に対して2.1%増加ということで、嬉しい話の様に聞こえますが、ここで言う現金給与額は実額がどの程度増えたか、ということであり、実際には、物価上昇を加味した実質賃金を見る事が重要です。賃金が伸びても物価上昇がそれ以上に伸びていれば、生活は苦しくなるからです。これが政府としても物価高を上回る賃上げを企業に求めている理由となります。

さて2022年の実質賃金はどうだったかと言えば、▲0.9%、つまり物価高に給与上昇が追いつかなかったということになります。

 

さて、それでは2023年についてはどうなるのでしょうか。今まさに2023年の賃金上昇を労使で協議する春闘が始まるところになります。日本労働組合総連合会(連合)は5%程度の賃上げを目標としています。

重要なのは定期給与部分が上昇すること=つまりベースアップの部分となります。特別給与の賞与は企業業績に左右されるものですから、業績が悪化すれば支給されない可能性がある賃金である性格をもっています。物価上昇の中で業績の悪化により支給される給与が少なくなれば労働者としては生活が厳しくなります。そのため、定期給与がしっかりと上昇することが求められます。

と、言葉では簡単なのですが、企業から見れば定期給与が上昇してしまえば、業績が悪い中でも人件費が高騰するリスクを抱えることになりますので、安定的に利益を出せる仕組みづくりがどうしても必要になります。日本の賃金を上げるためには、構造的な成長戦略が求められる、ということです。