まなびの『び』

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植田日銀総裁候補の所信聴取

黒田日本銀行総裁の後任として指名された植田氏ですが、2月24日の衆議院において所信聴取が行われました。このブログでも何度も繰り返し書いているのですが、やはり気になるのは現在日銀が行っている異次元緩和措置について出口をどのように考えているのか、です。

www3.nhk.or.jp

こちらの記事をもとに、植田氏の発言を見ていきたいと思います。

 

「現在、わが国は、内外経済や金融市場をめぐる不確実性が極めて大きい状態だ。消費者物価の上昇率は2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していくと考えている」

日銀の大規模な金融緩和について「さまざまな副作用が生じているが、経済・物価情勢を踏まえると、2%の物価安定目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思う。これまで日銀が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと継承し、積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたい」

2%の物価安定目標の早期実現を目指すとしている政府・日銀の共同声明について、「基調的な物価の動きは好ましいものが出始めてる段階だが、2%にはまだ時間がかかるところだ。現在の物価目標の表現を当面、変える必要はないと考えている」

イールドカーブコントロール」について「日銀は去年12月以降、副作用をなるべく緩和する意図のもと、さまざまな措置を採用し、現在はその効果を見守っている段階だと私は考えている。具体的なオプションの是非について申し上げることは、現時点では控えたいが、時間をかけて議論を重ね、望ましい姿を決めていきたい」

ETFについて「大量に買ったものを今後どうしていくかは大きな問題で、出口が近づいてくる場合には、具体的に考えないといけない。ただ現在は具体的に言及するのはまだ時期尚早と考えている」

大規模な金融緩和を見直すタイミングについて「2%の物価安定目標が見通せるようになっていくと見込まれる場合は、金融政策の正常化に向かって踏み出すことができると考えている」

2%の物価目標が達成された場合、金融緩和策で続けている大量の国債購入はやめる

 

非常にまともながら、特に当たり障りのない内容だった、と言うのが率直な感想です。このような感想だと批判している様に思えるかもしれませんが、決してそのつもりはありません。

現在の日本銀行の政策を肯定をしつつ、それにより生じている課題については今後の是正に向けて、そして状況に応じて金融緩和の出口戦略についても、今後議論をしていく必要がある、ということで冷静な目で現状を分析している様子が受け取れます。あまり突飛な発言をすれば市場に対する混乱も大きくなります。

仮に現状で具体的な発言に踏み切ってしまえば、それを織り込みに市場は動こうとしますが、一方で現日銀の体制は1か月以上続く中で金融政策決定会合もあり、その決定内容とも齟齬が生じてきてしまうことも発生します。

個人的に考えれば、消費者物価指数が歴史的な高水準である中、多くの企業が賃上げに踏み切れるよう、経済の下支えは必要であり、それが安定的なインフレ目標の達成につながると思っています。そのためには、急激な方向転換は好ましくなく、現状日銀政策をいったん受け止め、経済悪化を防ぐことが優先ではないかと思っています。

大事なのは、今後5年にわたりどのように柔軟に動けるか、ではないかと思います。