こども家庭庁の発足と少子化対策のたたき台の公表
4月1日が年度の始まりということで、行政の世界でもこども家庭庁が発足となりました。保育所などを所管する厚生労働省や、少子化対策などの内閣府など、複数の省庁にまたがって縦割り構造となっていた、こども政策に関する課題などを横串をさして一貫して所管することになります。目下、日本の最大の課題の一つである少子高齢化にどの様に取り組んでいくかを決定することになります。
前日である3月31日には第6回「こども政策の強化に関する関係府省会議」が開かれ、6月に公表される「経済財政運営と改革の基本方針2023」に盛り込む少子化政策に向けたたたき台を発表しました。ニュースでは、その具体的な施策が主に取り上げられていますが、内容を整理してみます。
【こども・子育て政策の課題】
・若い世代が結婚・子育ての将来展望が描けない
・子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
・子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する
【基本理念】
・若い世代の所得を増やす
・社会全体の構造・意識を変える
・すべての子育て世帯を切れ目なく支援する
【今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策(加速化プラン)】
①現金給付政策
②子育て支援の量から質への転換
③全年齢層への切れ目のない支援
④社会的養護、障害児支援の支援基盤の拡充
⑤共働き・共育てのための中小企業支援
⑥社会全体の意識改革
【経済的支援の強化】
・児童手当の拡充(所得制限の撤廃、高校卒業まで延長)
・妊娠・出産機から2歳までの支援強化(出産・子育て応援交付金の制度化、出産費用の保険適用)
・医療費等の負担軽減(医療費助成を実施している市町村への国民健康保険の減額調整措置の廃止、学校給食費の無償化)
・高等教育費の負担軽減(貸与型奨学金の減額返還制度の年収上限の引き上げ、旧型奨学金の拡大、授業料後払い制度の導入、地方自治体の高等教育費の負担軽減)
・住宅支援(公的賃貸住宅の子育て世帯の入居優先化、空き家の改修、フラット35の支援)
【全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充】
・妊娠期からの支援拡充(伴走型相談支援の制度化、産後ケア事業の強化、女性の健康や疾患に特化した研究促進)
・幼児教育・保育の質の向上(運営費の見える化、保育人材の確保、職員配置基準の改善)
・こども誰でも通園制度の創設(就労要件を問わない通園制度、病児保育の充実)
・小1の壁打破(放課後児童クラブの拡大、職員配置の改善)
・多様な支援ニーズへの対応(こども家庭センターの強化、障害児支援体制の強化、ひとり親家庭の就業促進)
【共働き・共育ての推進】
・男性育休の取得推進(育休取得率目標の引き上げ、育児休業給付金100%へ)
・育児期の柔軟な働き方(短時間勤務・テレワークの制度、時短取得者によるキャリア形成の差の解消)
【こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革】
・こども・子育てを応援する好事例を横展開
ニュースでは、高校までの児童手当の拡充がメインで取り上げられていますが、個人的には意外にも、しっかりと課題を捉えて、男性を含めた働き方改革や公共住宅の再利用といったアイディアや、病児保育の拡充などしっかりと考えられている印象です。
これで十分かといえば、そうではないでしょうが、それでも報道で取り上げられている以上には内容が深い印象を感じました。ニュースを見て「こんなものか」という様に感じられた方は、一度原文を見てみるのも良いかと思います。