まなびの『び』

投資運用、業界研究、時事、その他学んだことを

夏のボーナスが昨年+13.8%と大幅増(経団連)一方その頃中小企業では。。。

夏のボーナスシーズンです。そんな中、下記ニュースがありましたので、今回はその話題。

news.yahoo.co.jp

記事の元となった経団連の発表は、以下のPDFとなります。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/065.pdf

 

6月支給のところが多いと思いますが、夏のボーナスはここ数年のコロナ影響により減っていた状況から、2022年度については去年の夏のボーナスから平均+13.8%と4年ぶりの増加となったとのことです。

この数値は現行方法での集計となった1981年以降で最大とのことです。

 

平均値では13.8%ですが、業種によって増減率は大きく異なっており、これはまさに業界としての好調、不調を表しています。

一番大きいのは鉄鋼業で88.1%増。

反対に少ない、むしろ減ってしまったのは、建設業で▲1.1%でした。

 

製鉄業のうち、JFEホールディングスは決算分析も行いました。

manabinobi.hatenablog.com

原材料高騰がありつつもそれを、うまく価格に転嫁することに成功しており、またコロナ禍からの回復という追い風により、好調な決算を発表していました。(JFEのが今回の発表の対象となっているかは不明です。)

 

経団連が今回調査対象としたのは、従業員が原則500人以上の大手253社です。

一方で以下のようなニュースもありました。 

news.yahoo.co.jp

こちらは、上記とは違い、中小企業、零細企業の従業員と代表取締役を対象とした調査によるもので、支給予定あり(含む支給済み)の回答が約4割、支給額が10万~30万が多いとのことです。

 

2つのニュースを比較して見ると、大手と中小企業との差がよく分かります。経団連の発表では支給額の全体平均は93万円、対して中小企業の多くが10〜30万。

 

日本が特有なのか、世界的にそうなのかは不明ですが、現代日本の課題の一端が見える様な気がします。

大手の一時的ではあっても好調が、中小企業まで行き渡っているのか、あるいは中小企業も大手企業に対して価格転嫁を実現できるのか、といった課題です。日本人の購買力は従業員の3分の2を占めている中小企業社員の影響も大きく、これら中小企業の経営状況が、日本の景気をコントロールといってもよいと思っています。

 

6月20日、日本株式マーケットの

日本の株式市場はここ数日で大幅に下落していますが、本日も荒れた値動きとなりました。

日経平均5日間チャート(前営業日比▲0.74%)

◯TOPIX5日間チャート(前営業日比▲0.92%)

20日日経平均およびTOPIXは、前場にかけて下落、後場は少し反発するものの、買い戻しは限定的でした。
日経平均は5月12日の安値を割っており、今後の動きがかなり重要になってきます。

 

なぜここまで下がったかといえば、先週の米連邦準備理事会やスイス国立銀行などの利上げ発表などの金融引締めにより、世界的な景気の減速が懸念されていることと言われています。

manabinobi.hatenablog.com

 

先行き不透明感から、株式のリスク資産を売却しキャッシュを増やす動きが出ているとされていて、多くの銘柄で下落しています。

東証では、値上がり銘柄936銘柄、値下がり銘柄2907銘柄となっています。

 

値下がり率が大きかったのは、鉱業・石油銘柄や商社、半導体関連銘柄も大きく下がっています。本日大きく値下がりした銘柄のチャートをいくつか見ていきましょう。

 

◯INPEX3ヶ月間チャート(前営業日比▲9.4%)

 

三菱重工業3ヶ月間チャート(前営業日比▲9.2%)

 

◯丸紅3ヶ月間チャート(前営業日比▲6.6%)

 

信越化学工業3ヶ月間チャート(前営業日比▲6.4%)

 

INPEXについては、前営業日比9.4%と大きく下落、原油高を背景に上昇トレンドにありましたが、原油先物の下落もあり、株価は5月前半まで戻ってしまいました。6月末は配当の権利確定があるだけに上昇も期待されていただけに今回の値下がりで売りに出た株主も多かったのではないでしょうか。

三菱重工業もここ数ヶ月、25日移動平均線支持線に非常に好調なチャートとなっていましたが、ここに来て崩れると一気に下落しました。これまで好調だった銘柄については、今後大きく値下がりをする前に利益確定をしたり、ロスカットが働いているのではないかと思います。

 

6月20日はジューンティーンスという奴隷開放を祝う祝日の振替休日で、ニューヨーク市場は休場です。大きな値動きは起こりづらく、動きにくい相場となるのではないでしょうか。

ヤーマン(6630)の決算分析

美容器具のヤーマンの決算分析をしていきます。

 

〇ヤーマンの事業内容

ヤーマンは、主に家庭用美容健康器具や化粧品の開発・製造・販売を行っている企業です。

セグメントはその販路によって分けていて、テレビ通販、カタログ通販、インターネット通販による販売である通販部門、家電量販店等を通じて販売する店販部門、インフォーマルや雑誌、新聞、Web等メディアを通じた直販部門、海外の通信販売事業者、卸売事業者、個人消費者へ販売する海外部門に分かれています。

商品としては、美顔器などの美容家電、化粧品、健康家電等で、主力商品として美顔器の「RFシリーズ」、光美容器「レイボーテ」、ウェアラブル美顔器

「メディリフト」、ホームエステ「みーぜ」といったものがあります。

 

〇ヤーマンの業績推移

ヤーマンは2020年4月期に新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、特にインバウンド需要が低迷したことによって、この期は業績が落ち込みましたが、それ以外では順調に成長を遂げている企業です。

2022年4月期も売上高11.8%の増収、営業利益12.5%、経常利益32.1%増、最終利益49.9%増と過去最高の業績となっています。

特に海外部門が中国において大きく売上を伸ばしたことや、国内各販路もそれぞれ堅調な売上となった

としています。海外部門では前期比32.0%の増収と業績を引っ張っていっている状況になります。

ヤーマンの特徴として高い営業利益率にあります。2022年4月期の営業利益率は16.8%となっています。ヤーマン自身としては目標値を20%に置いているのですが、そのためにも価格競争に巻き込まれない強みを持った商品をリリースできていることがわかります。

 

2023年4月期は売上高500億円(22.1%増)、営業利益100億円(45.3%増)とかなり強気なものとしています。これは2023年4月期が中期経営計画の最終年度であり、その数値目標にあわせたものとなっています。増収率、増益率ともに高すぎる目標に見えますが、一方で新型コロナウイルスの感染拡大により落ち込んだインバウンドが回復し、円安状況であることも踏まえると、ヤーマンにとっては強い追い風が吹いている状況ともいえるのかもしれません。

 

〇ヤーマンの株価推移

今回の決算発表を受けて、6月15日の株価は前日比159円(12.8%)増と大きく伸長しました。その後は地合いに押されているような状況ではあります。見通しが高すぎる印象ではあるので、今後の進捗を見ながら株価は大きく動くのではないかと推測しています。

1億総株主を実現するためにどうすればよいか?

前回は貯蓄についての資料をみていましたが、今回は前回見ていなかった負債の面も含めた家計をみてみます。

 

(前回記事)

 

manabinobi.hatenablog.com

 

 

そもそも日本人は何のために負債をするかを見てみますと、90%以上は「住宅・土地のため」が占めています。つまり住宅ローンなどを目的としているということなのでしょうか。

世帯主の年齢別でみてみると、40~49歳までの63.7%が負債を保有している世帯としてここがピークとなりますが、40歳未満も59.2%が負債があります。そして、これら世帯は、貯蓄残高よりも負債残高の方が大きくなっています。

当然ですが、借入してから返済が進むにつれ貯蓄残高は減っていきますので、およそ40歳頃までに住宅を購入し、その後返済を行っている構図が見えてきます。また、これら世帯は子育て世帯でもありますから、支出も多くなることで、貯蓄が増え辛い状況でしょう。

そして年齢が進めば進むほど貯蓄残高も増えています。50歳台になって年功序列的に年収がピークとなるのと、子供が手を離れ、支出が減ってきます。また60歳台になって退職することにより退職金が入って貯蓄が増えている様子も想像できます。

 

この貯蓄状況と負債状況を踏まえ、余剰資金から投資に回すということが前提にあるとすれば、40歳未満、および40歳~49歳までの世帯は、投資をすることができず、日本人が貯蓄投資をすることができるのは、50歳以上の世帯ということがわかります。

 

さて、岸田首相は1億総株主という言葉を発しています。そうなると、現在負債を多く抱えている世帯も投資をさせるということを考えていることになります。

つまり、1億総株主を実現させるためには、負債残高>貯蓄残高となっている40代以下の世帯に投資をさせることが重要になってきます。どうすればよいのでしょうか。

やはりこの世代の特徴としては、子育て世帯及び住宅ローン負債の大きさが課題となります。そうなると、打ち手は次の通りになるのではないでしょうか。

・教育費無償化や子育て支援。夫婦共働きのための環境づくり、あるいは児童手当の拡充。特にこの点は親の所得額に無関係に実現してほしいと思います。

・住宅ローン返済よりも投資を優先させる取り組み。具体的には、住宅ローン減税の拡充。

いずれも、40代以下の手元キャッシュを増やすためのものです。例えば大学費用など、近い目線で貯めようとすると、どうしても株や投資信託はリスクが大きくなってしまいます。そうではなく、中長期的な目線で貯蓄をしていくことが重要になってくるので、そのためには大学費用も含めた教育費無償化が大事だと思います。

 

岸田首相が1億総株主に向けてどの様な方針を売ってくるのか、ぜひニーサの拡充だけでなく、目詰まりとなっている部分の解消を含めた政策展開を見せてほしいものです。

誰が貯蓄を持っているのか?〜日本の世帯の貯蓄構造〜

最近報道番組を見ていると、岸田首相の発言であった「貯蓄から投資へ」に対する報道が結構な頻度で取り上げられています。私が見ている番組では多くの場合、街の人の話として、「投資に回せるほどのお金がない」というコメントを載せて、若干否定的な内容になっていることが多く見受けられました。中にはコロナで所得が減った人も引き合いに出したりしています。

街の人の声は確かに事実なのでしょう。しかし一方で、もうひとつの事実として、二人以上の世帯における1世帯当たりの貯蓄の平均値は1,880万円もあるとのことです。

 

今回は5月10日公表の家計調査報告(貯蓄・負債編)を見ていきます。

なお、この調査においては貯蓄とは、銀行その他金融機関への預貯金、生命保険等、株式、債券、投資信託等の有価証券、社内預金や勤め先の共済組合などへの貯蓄も含める、としています。

www.stat.go.jp

 

◯貯蓄はどれだけされているのか。

2021年の二人以上世帯において、1世帯当たりの貯蓄残高の平均値は上記の通り1,880万円でした。中央値も見てみると、貯蓄「0」の世帯を除いた中央値が1,104万円、貯蓄「0」の世帯を含めた中央値で1,026万円でした。

これが勤労者世帯(世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯)で絞ると、貯蓄残高の平均値は1,454万円、中央値は貯蓄「0」世帯を除くと833万円、貯蓄「0」世帯を含めて784万円となっています。

 

◯どの様な世帯が貯蓄を持っているのか?

全体と勤労者世帯を比較した内容を見ると、勤労者世帯よりも勤労者世帯以外が多くの貯蓄を保有していることがわかります。勤労者世帯以外というと、世帯主が年金生活など無職であったりの、個人事業主、あるいは企業の役員であったりなどの世帯をさしています。

貯蓄残高別に世帯分布を見ると、構造がわかりやすくなります。1割強の世帯が貯蓄100万円未満ということになります。また、300万円未満までで、2割強。貯蓄の少ない世帯は多く、貯蓄の多い世帯は少ない反比例の様な構造になっています。

 

さらに世帯主の年齢別で見てみます。

  全世帯 ~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳~
貯蓄平均額 1,880 414 774 1,134 1,846 2,537 2,318

 

すると上表の通りで、50歳~59歳までの世帯がほぼ全世帯平均であり、これより若年の層は貯蓄額が少なく、60歳以上は貯蓄額が多いという構造であることがわかります。

 

次回は岸田首相の発言した1億総株主を実現するための課題についてみていこうと思います。

スイスが15年ぶり政策金利を引き上げ。スイス・フランの歴史

スイスの中央銀行であるスイス国立銀行政策金利を0.5%引き上げ、マイナス0.25%にすることを発表しました。この政策金利の引き上げは2007年以来15年ぶりということです。

スイスではこれまで政策金利はマイナス0.75%と世界各国と比べて最も低い政策金利となっていました。日本の政策金利マイナス0.1%と比較してもかなり低いことがわかると思います。

 

スイス・フランは、永世中立国というスイスの国際的地位から、安全資産と言われていて、そのために一度金融危機等が発生するとスイス・フランが買われて価格が急騰しやすい特徴があります。この特徴から過去、スイスフランショックという事件も発生しています。

 

これは2015年に発生した事件で、スイス・フランが数十分という短い時間の中でスイス・フランが暴騰、他通貨が急落をしました。1ユーロが1.2スイス・フランだったところ、数分の間に0.85スイス・フランまで上昇してしまいました。

背景には、それまでスイス国立銀行が取っていた1ユーロ1.20スイス・フランという上限を撤廃したということになります。この上限は上記のような高騰が起きないように設定していたものですが、この撤廃により一気に価格が変動を起こしたことになります。

あまりにも急激な価格上昇によりFXでの強制ロスカットが働かず、想定以上の損を抱えたトレーダーや証券会社の破綻が発生しています。

 

さて、スイス国立銀行の設定した価格上限はなくなったものの、安定資産の地位は引き続き維持されており、マイナス金利の導入によりスイス・フランよりも他通貨の方が金利が高いという状況を意図的に作ることで、スイス・フランの高騰を抑え、スイス・フラン安という状況を作っていました。

 

この様な状況の中で、今回のスイス国立銀行の発表となります。

上図はスイス・フラン-円の16日の1分足チャートですが、16:30くらいまで1スイス・フラン=134.8円ほどだったのが、10分ほどで137.2円近くまで上昇しています。

そして為替だけにとどまらず、日経平均先物にも大きくインパクトを与えました。16時40分ごろに25,640円までさがっています。16日の日経平均終値が26,430円でしたので、一気に800円下がっています。日本だけでなく、世界各国の市場で同様の急落が発生しており、今回の事象が大きいものかわかります。いま記事を書いているのが16日の21時ごろですが、この記事を掲載するときにはどのようなことになっているでしょうか。

天然ガス先物価格に起こった異変

6月14日、アメリカの天然ガス先物価格が2割弱と大きく下がるという事象が発生しました。一方同日のヨーロッパでは、先物価格が2割弱上昇しています。同じ天然ガスという物質なのにもかかわらず、アメリカとヨーロッパでこれだけ価格が反対に動くということは、一見非常に不思議な話ですが、これはアメリカからヨーロッパへの天然ガスの輸出量が減少するということへの恐れから、この様な先物価格の動きになったものです。

つまり、アメリカからの輸出量が減ることでヨーロッパでは天然ガスの供給量が減り不足することで価格が上昇する。一方でアメリカでは輸出できない分がアメリカ国内で過剰になり、価格が下落するということです。

 

なぜこの様な事になったかといえば、アメリカの液化天然ガスプラントの運営会社フリーポートで火災が発生した事によります。この火災現場が輸出用のプラントであることから輸出が停止し、停止した分がアメリカ国内に振り分けられることになりました。先の天然ガス価格の変動は、輸出用プラントが一部再開されるまでに3ヶ月、フル稼働は2022年度後半と発表したことによる値動きです。これがその通りとなれば、事態は長期化しそうです。

 

日本も他人事ではなく、東京電力ホールディングスと中部電力の共同出資で運営されているJERAや、関西電力大阪ガスといった企業が、フリーポート社から液化天然ガスを調達している様です。日本が輸入する天然ガス総量から考えると調達量は多くないものの、日本を含むアメリカ以外の地域で天然ガス価格の上昇することで、またエネルギー価格の上昇に繋がっていきます。

 

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアからの輸入を削減し、替わりにアメリカからの輸入に切り替えをしつつあったヨーロッパにとってはますます辛い状況になってしまいました。ヨーロッパではこれまで資源価格の上昇理由がいくつも重なっている状況になります。ただでさえ上昇している天然ガス価格の下がる理由がなくなってきてしまいます。

完全に妄想ではありますが、ヨーロッパ側が音を上げて、経済制裁解除を条件とするロシアへの休戦申し入れを行う、といったことも考えられるとも思います。それだけ、ヨーロッパのインフレリスクは深刻となってしまうかもしれません。