SBIが今回のTOBで目指すもの
これまででSBIホールディングス、新生銀行それぞれの企業の特徴を見てきましたので、それでは今回の新生銀行へのTOBでSBIホールディングスはどのような将来像を描いているのか、見ていこうと思います。
9月9日の新生銀行へのTOB開始の際のSBIの公表資料によりますと、TOBの目的を「SBIHDグループと対象者グループ(新生銀行グループ)の事業が相互補完的であり、両グループの経営資源を有機的に組み合わせることができれば顧客の利便性向上につながり、両グループの企業価値向上を図ることができると考えた」と記載されています。
(a) リテール口座と証券分野における連携
SBIホールディングスの中核会社としているSBI証券と新生銀行との連携を指していて、新生銀行の銀行口座開設時にSBI証券口座を同時開設できるようにすること、新生銀行の預金口座との連携をすることで、顧客利便性の向上。SBIから新生銀行への送客を行うものです。
(b) 小口ファイナンスにおける連携
SBIホールディングスが若年層に向けて手数料の無料としていることや、スマートフォン取引に特化したSBIネオモバイル証券を持っていること。新生銀行はレイクALSA等の無担保ローンなど商品があること。若年層向けの強みをそれぞれが持っていることから、お互いに送客しあうことができる。また、与信判断、マーケティングの分野で互いのデータの蓄積を行うことでコスト削減につながるというものです。
新生銀行の特徴であるストラクチャードファイナンス。新生銀行はストラクチャードファイナスの分野を地銀と連携することを目指していますが、SBIホールディングスは既に複数の地銀との提携先があることから、このネットワークを使って新生銀行のストラクチャードファイナンスを提案できるようにするというもの。
SBIホールディングス、新生銀行グループそれぞれが持つ投資事業において、そのノウハウの共有などで生産性向上に繋がり、またSBI提携の地銀に対するシンジケートローン提案といったことも可能になるとしています。
(e) 市場営業・トレジャリー(注)における連携
SBIホールディングスのもつSBIリクイディティ・マーケット株式会社の価格競争力のあるスプレッド(買値と売値の差)を活用し、新生銀行における為替取引コストを抑制することにつながることです。
(f) リース事業における連携
新生銀行グループの昭和リース商品をSBIホールディングス提携先の地銀の取引先に提供することができる。
とTOBによるシナジーを記載をしていて、「両グループの事業上の親和性は非常に高い」としています。これまで見てきたように新生銀行は強みがあるにも関わらず、それを活かしきれていない、というのがSBIホールディングスの主張で、これをSBI傘下に入ることにより、SBI提携先地銀や、SBI既存顧客に提案が用意になることで、ウィンウィンとなる、という筋書きの様です。
株式を集めている旧村上ファンド系の動きも気になりますが、SBIホールディングスの新生銀行へのTOBの動きについてはひとまずこれで終わるものと思います。ここらは実際にSBIが描いたストーリーの実現に向けた動きが行われます。
SBIが提携を進めている地銀は低金利の長期化を背景に収益源の多様化や強化が必要です。その中で今回のTOBにより、地銀の武器が増え、ひいては地域経済の活性化につながることを期待します。
これまでの記事
※TOBの経過
※SBIホールディングスについて
※新生銀行について