まなびの『び』

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中国がサウジアラビアに接近。原油をめぐる外交

中国の習近平国家主席サウジアラビアを訪問。皇太子と会談し、接近を図りました。サウジアラビアといえば、2020年原油生産量第2位の中東最大の産油国。その重要性は言うまでもありませんが、何が背景にあるかを見ていきたいと思います。

 

まずは中国。こちらも言わずもがなアメリカに次いだ経済大国になっていますが、経済発展のためにはエネルギーの確保が重要です。今後の成長のためには原油確保は最重要といっていいほどの課題です。中国には大慶油田渤海油田あどの大規模な油田はありますが、7割ほどを輸入に頼っている様です。サウジアラビアとの関係強化はその点、価値がある国となります。

 

対してサウジアラビアサウジアラビア原油産出国ではありますが、脱炭素の流れもあり石油の需要は減っていく方向性。この中でサウジアラビア自身も原油に頼らない経済体制への変革を目指しています。中国からの技術協力を受けるメリットはありますし、また原油の売り先の確保という観点からも、経済大国の中国との接近は重要な意味を持ちます。

また、サウジアラビアは第2位の産油国と書きましたが、第1位は実はアメリカです。それまで中東産原油を頼りに開発を進めてきたところに、アメリカ国内で「シェール革命」により産油量が増えると、アメリカは原油輸入国から輸出国へ転じ、これによりアメリカにとって、サウジアラビアとの外交の重要性は下がりました。サウジアラビアとしてもアメリカに完全に見切りをつける必要はないものの、次の手としての中国と親密になっていくことに越したことはありません。

この状況を中国にしてみれば、アメリカと疎遠になりつつあるサウジアラビアとより強固な関係性を築くことで、世界の中での中国派閥を作ることができます。アメリカと覇権を競う中で自分たちの味方を増やすことのメリットは重要です。

まして7月にバイデン大統領がサウジアラビアを訪問。インフレ対策として高騰していた原油価格を下げる目的で原油の増産を求めたとされていますが、結局はほぼ効果なく、アメリカの影響力の薄さを感じさせ、一方で今回の中国習近平の訪問については、包括的戦略協定を締結するなど、対比してみると中国にとって世界的なアピールの場にもなったのではないかと思います。

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このようにアメリカVS中国の中で、日本の存在感が薄く感じてしまうわけですが、日本にとって原油の輸入は最重要課題の一つであり、サウジアラビアは最大の輸入元です。サウジアラビアと中国との親密性が高まると、それは日本にとっても経済安保上の危機に繋がりかねないかと。